「高齢化社会」を超える「超高齢社会」
実はもうひとつ、私たちが資産運用をしなければならない理由があります。
それは超高齢社会の到来です。余談ですが、よく「高齢化社会」という言葉を用いる人がいますが、これは大きな間違いです。
実はこの言葉には定義があり、高齢化社会とは65歳以上の高齢者の割合が全人口の7%を超えた社会のことを指します。日本の高齢者人口の割合が7%を超えたのは、実に1970年のことです。
次に、65歳以上の高齢者の割合が全人口の14%を超えた社会のことを「高齢社会」と言います。ちなみに日本の場合、1995年の時点で高齢化率が14.6%となり、高齢社会に突入しました。
では、いまの日本はどの位置にあるのでしょうか。
2023年9月の敬老の日に、総務省が発表した高齢化率は29.1%で、過去最高を更新しました。
つまり高齢社会の高齢化率すら大幅に上回っています。65歳以上の高齢者の割合が全人口の21%を超えた社会のことを「超高齢社会」と言うのですが、日本はまさにここに位置しています。
日本は「高齢化社会」ではなく、とっくの昔に「超高齢社会」に突入しているのです。ちなみに日本の高齢化率が21%を超えて超高齢社会に入ったのは、いまから14年も前の2010年のことでした。
高齢社会の何が問題なのか、ということですが、これは各種保障を受けられる人の数が増える一方、それを支える人の数が減るということです。これによって健康保険や年金の財政が悪化します。
たとえば年金。国民皆年金制度によって誰もが加入している(とされている)国民年金をはじめ、企業や役所、私立学校などに属して働いている人が加入している厚生年金などの公的年金は、「賦課年金方式」が採用されています。
これは、自分の年金を自分で積み立てていく「積立方式」とは違い、世代間扶養とも言われますが、要するに現役世代が支払っている年金保険料でもって、高齢者の年金支給を賄うという方式です。
この方式は、かつてインフレに強いなどとも言われてきたのですが、近年、高齢者人口の増加と労働力人口の減少により、入りと出のアンバランスが問題視されるようになってきました。
そして、この傾向は今後も加速していきます。
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来人口推計」によると、2020年の高齢者人口の割合が28.6%であるのに対し、15~64歳の労働力人口の割合は59.5%でした。
減っていく年金、将来の不安をなくすには「資産運用」
これが将来どうなるのかというと、2061年には高齢者人口の割合が38%まで上昇する一方、労働力人口の割合は52.8%まで低下します。さらに先を見ると、2070年には、高齢者人口の割合が38.7%で、労働力人口の割合は52.1%と予測されています。
もう少し分かりやすい表現にすると、2020年時点では、2.08人の現役世代が1人の高齢者を支えていたのが、2061年には1.39人の現役世代で1人の高齢者を、さらに2070年には1.34人の現役世代で1人の高齢者を支えなければなりません。
このようになると、恐らく年金を受け取る側である高齢者は、徐々に年金の額が減額されるか、もしくは年金を満額受給できる年齢が引き上げられることになるでしょう。いずれにしても、生涯を通じて受け取れる年金の額は目減りするはずです。
一方、保険料を負担する現役世代にとっては、年金保険料の負担が徐々に重くなっていくでしょう。
しかも、現役世代の大変なところは、現役世代は年金保険料の負担が重くなる一方、自分自身が高齢者になった時、いま以上に現役世代の人口が減っているため、受け取れる年金の額がさらに減額されている恐れがあること。
では、どうしたら将来の年金不安を払拭できるのでしょうか。
その答えのひとつが「資産運用」です。
2024年1月にスタートした新NISAは「これからは国に頼られても困ります。税金を優遇しますので、自己責任で資産を増やしてください」という日本政府からのメッセージだと受け止めた方が良いでしょう。
それを考えると、資産運用をしないという選択肢の方が、あり得ない話です。
安藤 義人
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