(※写真はイメージです/PIXTA)

物価高だ、不景気だ、と巷で騒がれていても、そんな話はどこ吹く風。収入が多く、資産潤沢な高所得層は一定数います。誰もが羨むような経済状況であっても、そんな人たちも老後は苦労するというケースも……。本記事では、島さん(仮名)の事例とともに、富裕層の老後破産についてFP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

基本的な金融リテラシーさえ持たないお金持ちたち

FPが島さんご夫婦の家計を振り返ると、なんと毎月200万円もの支出があったことがわかりました。現役のころから2人は生活費だけで月間120万円ものお金を使って生活していたのです。必要だと思う分を使っていく家計スタイル。それでも世帯年収4,000万円を超える高収入だったため、特段工夫することなく2億円を超える資産をつくることができていました。

 

しかし、リタイア後はそれまで以上に家計管理が杜撰に。散財が止まらず、往復で400万円もするような旅行に頻繁に出かけたり、ブランドものも新しいものが出るとすぐに買ったりと浪費癖を加速してしまったのです。

 

特に海外旅行は交通費・宿泊代だけでなく、現地での買い物において想像よりもはるかに大きな支出となっていたようです。ブランドものの購入は、自宅にすでに着ていない服が溜る一方、本当に欲しいのかどうかを区別しないで購入してしまう状態。支出に歯止めが利かなくなっていました。

 

2億円と聞くと誰もが羨む余裕の生活ができる資産額だと考えてしまいがちです。しかし当然、「羨まれる資産額=際限なくお金を使えること」ではありません。島さん夫婦は年間3,000万円のペースで支出していましたので、やっと年金を受け取り始めたころにはすでに資産を使い果たし、マンションを売らなければ生活できないレベルになってしまっていたのです。さらには、それでも支出を抑えられず、消費者金融にまで手を出す始末……。

 

65歳からは夫婦で月に20万円ずつ、合計月40万円を受け取ることができる公的年金も受給開始されましたが、年間で2,000万円以上使ってしまっていたため焼け石に水状態です。収支の改善は喫緊の課題のはずでした。誰もがわかっていそうなことですが、使ってもよいお金には上限があり、それを超えれば手持ちのお金はマイナスしていってしまいます。ではなぜ島さん夫婦にはそれがわからなかったともいえる行動をしてきたのでしょう。

 

大変単純なことですが、結婚当初からお金に困ることがなかったことが根本原因となっていました。夫婦でお金について相談する必要のないほどお金に余裕がありました。どの程度まで使ってもいいのかを把握せず、お金のリテラシーを身に着けてこなかったのです。それを把握せずに生活していたことが最大の問題といえます。

 

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