今も存続していること自体が「良いマンション」である証し
2つ目の理由として、建築資材のコストが現在の半分ほどで済んだため、良い資材をどんどん活用できたという点が挙げられます。こうした事情に加えて、当時は建設人口も豊富だったため、今ではまったく考えられないことですが、スーパーゼネコンが請負金額5億円以下の建築を受注するほど競争は過熱していました。
このような物件が盛んに造られたのは、1989年から1991年にかけてです。平成5年を過ぎるとバブルが崩壊するので、ゴージャスな物件の数は一気に減り、それ以降は同様の条件下でマンションが建てられる時代は訪れていません。
同じような物件が「これ以上はもう建たない」という意味で、バブル期のマンションは「希少価値がある」という見方ができるかもしれません。
とはいえ、当時は「建てれば売れる時代」でもありました。多くの物件がハイスピードで建てられ、今のように安全に対する意識も十分ではなく、すべての物件が丁寧に扱われたわけではないことも事実として認識しておくべきです。
しかし、一流のゼネコンはそんなバブルの最中であっても、品質管理を強化し、現在の観点から眺めても、本当に良いものを造っていました。
気候や天候の激しい変化の中で、大きなダメージを受けるような計画や施工となっていないか、20年、30年先に大規模な修繕や設備の交換を考えたときに、スムーズでリーズナブルな工事が可能になるような配慮がされているか、など、見てくれのゴージャスさに惑わされない真のプロの姿勢は30年以上を経た今だからこそ、私たちにも分かるものがあります。
施工不良の建物の場合、数年のうちに不具合が表面化してきます。ダメなものは、あっという間に分かりますが、良いものが本当にいいと分かるのは、時間がかかります。
現在でも部屋が埋まり、入居者が快適に暮らしているのであれば、それはもともとの品質の良さの証しでもあります。適切な管理と修繕は欠かせない条件ですが、今も存続していること自体が「良いマンション」である最大の証しなのです。
このように、バブル期のRC造マンションが高品質である理由をご理解いただければ、リノベーションをして使い続けることの意義もお分かりいただけると思います。
杉山 浩一
株式会社プラン・ドゥ 代表取締役
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