“案の定の反応”を示す長女だったが…娘婿がついに「ブチギレ」
こうして、長男と税理士、FPによって、完璧なライフプランを作り上げたA夫婦。
旧盆となり、長女家族・長男家族が揃ってA家に集まりました。にぎやかな夕食を終え、子どもたちが寝静まったあと、Aさんは「話がある」といって、長男夫婦と長女夫婦を呼び寄せました。
真剣な表情で、Aさんが相続案を話します。
すると案の定、長女がどんどん不機嫌に。「ちょっと、なにそれ……なんでそんなに少ないの!? 弟ばかりずるいわよ!」それどころか、スマートフォンのメモ帳アプリを開き、いつものようにお金の哀願をはじめます。
すると、普段は寡黙な長女の夫が大きな声をあげました。「どれだけ俺に恥をかかせれば気が済むんだ!」
一瞬、凍りついたその場の空気。長男夫婦が気を遣って部屋から退出したところで、長女の夫が堰(せき)を切ったように話し出しました。「俺の稼ぎだけじゃ不満か!? それに、いつまでも親に甘えているお前の姿を子どもたちが見たらどう思う! お義父さん、お義母さん、これまで本当にありがとうございました。結婚式の費用やマンションの頭金、心から感謝しています。でも、もうこれ以上妻を甘やかさないでください。妻や子どもたちが貧しい思いをしなくて済むように、私も一生懸命働きます」
あっけにとられたA夫妻でしたが、Aさんは男として娘婿の主張に共感する部分が多くあったといいます。「男として、自分の甲斐性がないと言われているようなものですからね。父親としてつい甘やかしていましたが、義息の言葉で目が覚めました」
結局、長女も相続案に同意し、遺言書の作成を進めることになったそうです。
相続トラブルは他人事ではない
最高裁判所「令和5年司法統計年報 3家事編」によると、令和5(2023)年に家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割協議の件数は7,234件※でした。そのうち、遺産総額1,000万円以下が2,448件、1,000万円超5,000万円以下は3,166件と、5,000万円以下の件数の合計が5,614件、全体の77.6%を占めています。
相続トラブルというと、富裕層だけに起きるというイメージを持つ人が多いようです。しかし、そうではありません。むしろ富裕層はトラブルを予防するための事前対策を徹底します。一方、相続税がかからない、またはかかっても少額な一般家庭のほうが、事前の対策を怠っていた結果、かえってトラブルに発生するケースが多いのです。
相続トラブルを避けるためには、相続する側(上記の例でいえば親)が、遺言書を作成する、遺産分割方法について相続人(配偶者や子どもたち)の同意を得るなどして、あらかじめ主体的に対策をとっておいてはいかがでしょうか。いずれにせよ「元気なうちにきちんと話しあっておく」ことが大切です。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員
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