資産4,500万円・60代両親の“完璧な相続案”に一同納得かと思いきや、40歳長女「弟ばかりずるい!」…和やかなお盆の実家が〈修羅場〉と化したワケ【CFPの助言】

資産4,500万円・60代両親の“完璧な相続案”に一同納得かと思いきや、40歳長女「弟ばかりずるい!」…和やかなお盆の実家が〈修羅場〉と化したワケ【CFPの助言】
(※写真はイメージです/PIXTA)

相続トラブルというと、「遺産をめぐって揉める富裕層」「庶民には関係ない」といったイメージを抱いている人は少なくありません。しかし、相続トラブルのほとんどは「遺産総額5,000万円以下」の家庭で起きているのです。60代夫婦と2人の子どもの事例をもとに、相続における注意点をみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。

増築費用1,800万円は長男が負担…税金は大丈夫?

A宅を増築する費用は約1,800万円で、すべて長男が負担します。このうちの頭金400万円は長男の貯蓄から賄い、残りの1,400万円は住宅ローンを組みます。月々の返済額は約6万7,000円で、20年間かけて返済する予定です。

 

「頭金くらいは援助しようと思い長男に相談したのですが、『世話になったんだからなにもいらないよ』と断られてしまったんです」とAさんはいいました。

 

C税理士は、現在A夫婦が住んでいる実家の時価が200万円、今回増築する部分が1,800万円のため、合わせて時価2,000万円として、不動産の課税関係は下記のようにまとめたそうです。

 

●増築部分は符合(民法第242号:不動産の符合)により、Aさん(父)の所有になる。

 

●Aさんは、長男から1,800万円の利益を得ることになり、贈与税が課税される。しかし増築後、9/10の持ち分を長男に移転し、Aさんが1/10、長男が9/10の共有名義で登記をすれば、経済的利益は1,800万円と同額になり、贈与税は課税されない。
※ 長男の持分は1,800万円÷(200万円+1,800万円)=0.9=9/10。Aさんの持ち分は200万円÷(200万円+1,800万円)=0.1=1/10。

 

●Aさんから長男への建物の持ち分の移転は、親から子どもへの譲渡となり、譲渡利益が生じれば譲渡所得(所得税)の課税対象になる。しかし、譲渡所得を計算すると、「収入金額2,000万円×9/10-取得費(200万円+1,800万円)×9/10=0円」。
※ 国税局タックスアンサー「No.4557 親名義の建物に子供が増築したとき」より抜粋。

 

つまりAさんは、1,800万円で取得して、1,800万円で譲渡したことになり、譲渡益はなく、課税はされない。

 

C税理士はここに付け加えて、「A親子の場合は不要なので問題ありませんが、共有とするための譲渡および親子間の譲渡のため、居住用財産を譲渡した場合の特例は適用されません。また、長男が返済する住宅ローンに住宅ローン控除も適用されません。

 

さらに、増築部分の土地も父の所有ですが、その上に使用貸借で増築するので費用は必要ありません」と話しました。
※ 無償での賃貸借契約のこと。

 

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※プライバシー保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。

【参考・出典】
■最高裁判所「令和5年司法統計年報 3家事編」の「第52表遺産分割事件のうち認容・を除く)―遺産の内容別」より。

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