住み替えを提案する息子に「家を離れたくない…」
「うちの両親は大変なおしどり夫婦でした。父は〈母と老後を楽しく過ごすのだ〉といって、70歳になっても仕事をつづけ、老後資金の貯蓄に励んでいたのですが…」
そう語るのは、40代の佐藤さん(仮名)。
「健康不安のないはずの母が、心筋梗塞で突然死してしまったのです」
ひとり残された父親を、佐藤さんは心配した。
佐藤さんは大学卒業後に川崎市の実家を離れ、東京や神奈川を転々としていたが、いまは勤務先の都合で茨城県に自分の家族と暮らしている。また、3歳年下の妹は、埼玉県で配偶者と配偶者の両親と暮らしている。
佐藤さんは父親に、ひとり暮らしには広すぎる実家を売って自分たちと同居してはどうかと持ち掛けたが、父親は「母さんと暮らした家を離れたくない」とかたくなだった。
結局、佐藤さんの父親は、これまで通り実家に暮らし続けることになった。
「父の年金は20万円ぐらい。預貯金もありますし、生活費の問題なさそうです。それに、父はあの年代には珍しく、家事もまあまあできるのです。妹と相談して〈本人の希望なら、しばらく見守ろう〉という話になりました」