親がお金のことを開示してくれるまで「3年」はかかる
親の相続について考える際、そして家族信託を組成する際に欠かせないのが、家族会議です。物忘れが多くなってきた親の資産凍結を避けるために対策をしようと、子どもたちのほうから呼びかけて、家族会議が開かれることが多いです。
親は、介護費用などについては、子どもに迷惑をかけたくないと思っています。子どもは子どもで、介護費用は親のお金で賄いたいと思っています。両者、思うところは同じですが、お互い本音がいい出せません。
以前、「親が子どもを信用して、お金のことを開示してくれるようになるには、コミュニケーションをきちんと取り始めてから、3年はかかる」という趣旨の本を出版しましたが、今もそれは変わりません。私の肌感覚で恐縮ですが、多くの相談を受けていて思うのは、やはりそれなりに時間はかかる、ということです。
親がお金の話をしたがらない理由は3つ。
① 「これしかお金がないの?」 といわれたくない。プライドが傷つく。
②「こんなに持っていたの?」と思われて、ねだられるのは辛い。
③「そんなことにお金を使えていいわね」とお金の使い方に口を出されるのは嫌。
と、いうことなのです。
家族会議を何度か繰り返していく中で、認知症対策が、資産凍結を回避するためだけではなく、親の身を案じての住環境の整備や通院のサポートについても話し合われるようになると親も悪い気はしません。
これだけ心配されているのだから、みんなに迷惑をかけないよう、 財産管理をしてもらおう。と、親がその気になってくれれば、お金についての話が徐々にできるようになります。
親の財産を守る「チーム」を作る
私が信託監督人として、就任しているご家庭の場合は、初年度は毎月のように、ご家族全員と家族信託の運用についてミーティングをしています。
ミーティングでは、「まず考えるべきは、親が安心して暮らせること。そのために親のお金を使っていこう」と、ずっと繰り返しいい続けています。ですから、会議の冒頭部分は、親御さんの状況から報告してもらいます。必要であれば、介護福祉用具について検討することもありますし、今後の介護の方向性などを親も含めて、みんなで意見を出し合うこともあります。
次に信託財産の現状と残高について報告をしてもらい、今後の使い方についても共有します。
このように親の健康に留意しながら財産を守っていくチームができていきますので、徐々に、親御さんが信託財産以外の財産についても具体的に話してくれるようになります。今まで聞きにくいから後回しにしていた親の介護の希望や、終末期の医療の話もできるようになります。
安田 まゆみ
ファイナンシャルプランナー
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