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介護と相続は密接に関係しています。介護の準備不足が原因で「争族」につながることは少なくありません。きょうだい間のコミュニケーション不足や、介護したことの評価が低く見積もられることがもめごとの原因となるケースとして挙げられます。FP歴27年の安田まゆみ氏の著書『もめないための相続前対策: 親が認知症になる前にやっておくと安心な手続き』(河出書房新社)から、一部を抜粋して紹介する本連載。安田氏が、介護の影響でどのように争族へと発展してしまうのか、具体的なケースを交えて解説します。

「介護に携わった人の寄与分の評価が低すぎる」現実

事前に介護の話し合いをしてこなかったご家庭では、介護に携わった子どもとそうでない子どもに、大きな意識の差が出てしまいます。

 

介護を中心にやってきた者にとっては、時間的な貢献、逸失利益、精神的な苦労があったのに、介護に携わってこなかったきょうだいには、それはわかりづらく、ピンとこないことも多いのです。

 

遺産分割協議で、それぞれの相続分を決める際に、介護した人に法定相続分より多く相続させるかどうかは、まずは話し合いで決めていきます。話し合いでは決着がつかなかった場合には、遺産分割の調停を起こして、和解の道を探ります。

寄与分の“高すぎるハードル”

ところが、調停という場で「寄与分」が認められるには、ハードルはかなり高くなります。

 

「寄与分」とは、民法で定めている、亡くなった人の財産の維持・増加に介護などで特別な貢献や援助をした相続人に、遺産分割で法定相続分よりも多くの財産を相続できる制度です。特別な「通常期待される程度を超える行為」であることがポイントになります。

 

「通院時にはいつも付き添っていた」「認知症の親と同居して食事や生活全般の世話をしていた」という程度では、「子どもが親の面倒をみるのは当たり前。それは寄与分には当たらない」といわれてしまうのです。

 

介護による精神的な負担などが、法律的な「寄与分」の要件には、当てはまらないことが多く、やってもやらなくても同じ評価だと思うと虚しさを感じる人も多いです。

認められる目安は「要介護2以上」

さらに、介護保険の要介護1程度の状態のときの介護は、どんなに時間をかけてサポートしても、寄与分には認められにくいといわれています。寄与分を認められる目安は、要介護2以上なのだとか。

 

確かに要介護1では、部分的な介護が必要だとはいえ、食事、排泄、着替え等はなんとか自分でできる状態ですが、要介護2は、食事や排泄には部分的な介護が必要で、歩行や起き上がりがひとりでできないことが多い状態です。

 

でもなぁ、と思うのです。

 

認知症の初期の段階では、自分で食事、着替え、排泄もできるから「要介護1」という認定になるのでしょうが、時々徘徊してしまう人もいます。そんな目を離せない人を自分の時間を使って介護しても、その介護は、寄与分には値しないということになるなんて……。

 

調停では、「徘徊に肝を冷やし、必死で探し回って、夜も気を抜けずに介護していた人」の努力が寄与分と認められることが少ないとは、とっても理不尽だなぁと思ってしまいます。

 

 

 

 

 

 

 

安田 まゆみ

ファイナンシャルプランナー

 

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