介護の準備不足で子どもたちが不幸になり、やがて「争族」へ
多くの相続のご相談をお受けしてきた経験からいうと、介護の準備不足が「争族」(相続で家族が争うようになること)につながっていくことは少なくありません。私は、介護と相続は地続きだと思っています。
裁判所が発表している司法統計年報によると、全国の家庭裁判所で発生した遺産分割事件は、1万2981件(2022年)でした。調停を起こすまではいたらなくても、相続人の間で、遺産分割についてもめたというケースは、この数倍はあるかもしれません。
よく、「もめるような財産はないから、うちは大丈夫だよ」という年配の方の声を聞くことがありますが、遺産が多い家庭だけがもめているわけではありません。
遺産分割の調停が成立した場合の遺産の金額を見ると(図を参照)、1,000万円以下で約33%、1,000万円超から5,000万円以下で約43%です。5,000万円以下を合計すると全体の約76%にのぼります。
少ない遺産だからこそ、誰がいくらを相続するのかについて敏感に反応してしまうのではないでしょうか。
私が相談を受けたケースでは、もめるご家庭には共通した特徴がありました。
・ごきょうだい間の仲が悪い
・介護の負担が特定の人に偏っている
・相続財産の評価が、預貯金よりも自宅不動産の割合が高い
・生前の贈与(資金援助)に、偏りがある
・きょうだい間で不公平な遺言が遺されていた
などです。きょうだいといえども価値観も違いますし、親元を離れて長い期間がたてば、疎遠になっていることも多く、コミュニケーションもほとんど取れないことが多いです。
このような状況で、急に介護が始まったりすると大変です。介護の押し付け合いで感情を対立させ、そのまま相続が発生、というようなケースもあります。かなり最悪な関係で相続に向かい合うことになります。
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