一般的な遺言では、「自分が亡くなった後、財産を誰に渡すか」ということしか指定できません。しかし、自分の財産を相続した人が亡くなったあと、その次に財産を引き継いでもらいたい人を指定したいという場合もあるでしょう。本記事では、松尾拓也氏の著書『「おふたりさまの老後」は準備が10割』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集し、財産を引き継ぐ順番まで指定できる「家族信託」という制度について詳しく解説します。
解決策は「家族信託」
そこでまず考えられるのは、次の方法です。
●自分が「妻に全財産を残す」という遺言を書いたうえで、妻に「夫の身内に全財産を残す」という遺言を書かせる
しかし、亡くなる順番は誰にもわかりませんし、遺言の内容はあくまでも本人の自由意思に基づくものです。妻が夫と同じ考えとは限りませんし、妻の遺言書の内容に、夫は口出しできません。
こういった場合に活用できるのが「家族信託」という制度です。
Q. 「家族信託」とはどういう制度ですか?
A. 財産を信頼できる家族(親族)に託し、管理をしてもらう仕組みです。
通常、自分の財産は「管理する」権利と「利用する」権利の両方を自分で行使しますが、家族信託では「管理する」権利だけを他の人にお願いします。
[図表2]を見てください。
おふたりさまの場合、何もしなければ財産を管理するのも利用するのも、ご夫婦で完結します。そこで、家族信託を開始し、夫側の甥に「管理」を託します。そうすると、自分(夫)亡き後、妻は財産を使う権利はそのまま、甥は財産を使う権利はありませんが、財産を管理する権利をもちます。妻が亡くなると信託は終了し、財産は甥のものになります。
このように、管理する人と利用する人を分けることができるのが「家族信託」です。図の③の状況では、基本的に財産管理については甥の判断で行えますが、受益者である妻の意向に沿った形での管理が求められます。
たとえば残された妻が認知症になり施設に入所した場合、管理権のある夫の甥が施設などへの支払い業務を行います(この場合の報酬は、無報酬でも有償でもかまいません)。
このように、信託という仕組みを使うことで、将来的な財産を引き継ぐ順番まで指定していくことが可能になります。
ただし、信託の設定後30年を経過した後は、受託者の死亡により信託は終了することになっていますので、その程度の時間軸で信託の検討をするようにしましょう。
松尾拓也
行政書士/ファイナンシャルプランナー
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行政書士松尾拓也事務所代表、有限会社三愛代表取締役
行政書士、ファイナンシャル・プランナー、相続と供養に精通する終活の専門家
行政書士、ファイナンシャル・プランナー、相続と供養に精通する終活の専門家。行政書士松尾拓也事務所代表、有限会社三愛代表取締役。1973年北海道生まれ。
父親が創業した石材店で墓石の営業に従事する傍ら、相続や終活などの相談を受けることが増えたため、すでに取得していた行政書士資格を活かし、相続・遺言相談をメイン業務として行うようになる。信条は、相談者からの困り事に「トータルで寄り添う」こと。
家族信託や身元保証など「新しい終活対策」についても積極的に取り組み、ライフプランや資産管理などの相談に応えるためにファイナンシャル・プランナー、住み替えニーズなどの相談に応えるために宅地建物取引士の資格を取得。ほかにも家族信託専門士、相続診断士、終活カウンセラー、お墓ディレクター1 級、墓地管理士など、終活にまつわるさまざまな資格を取得する。
経営する石材店では、おひとりさまやおふたりさまに好評な樹木葬や永代供養墓、ペットと一緒に入れるお墓など多様なニーズに応える墓苑を運営している。また、インテリアに合うモダンな仏壇の専門店も開設し、現代のライフスタイルに寄り添うご供養を提案している。
さらに地域ぐるみで終活に取り組む必要性にも着目し、他士業の専門家と連携した終活サポートチームを結成。終活セミナーなどの啓蒙活動に取り組むとともに、地域の行政に働きかけて独居高齢者の終活情報登録制度をスタートさせるなど、多方面で活動の場を広げている。
一人ひとりの「ライフエンディングシーン」(人生の終末期)で、最も頼りになるパートナーとなるべく、全方位視点で積極的な事業展開を行っている。趣味は本と酒と旅、ちょっと古めのクルマとバイク、座右の銘は「遊ぶように仕事し、仕事するように遊ぶ」。普段から「サムシングエルス(何か別の価値)を提供する」ことを大切にしている。
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