一般的な遺言では、「自分が亡くなった後、財産を誰に渡すか」ということしか指定できません。しかし、自分の財産を相続した人が亡くなったあと、その次に財産を引き継いでもらいたい人を指定したいという場合もあるでしょう。本記事では、松尾拓也氏の著書『「おふたりさまの老後」は準備が10割』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集し、財産を引き継ぐ順番まで指定できる「家族信託」という制度について詳しく解説します。
Q. 自分が亡くなり、妻も亡くなった後、自分の甥に残したい財産があるのですが……。
A.財産を引き継ぐ順番まで指定したいのであれば、「信託」という方法があります。
一般的な遺言では、「自分が亡くなった後、財産を誰に渡すか」ということしかできません。しかしこの質問のように、自分の財産を相続した人が亡くなったあと、その次に財産を引き継いでもらいたい人を指定したいという場合もあるでしょう。そんなときはどうすればいいのでしょうか?
先祖代々の資産家のケースはどうする?
たとえば、妻とおふたりさまだった先祖代々の地主さんの場合。自分の死後、いったん財産はすべて妻に相続させ、いずれ妻も亡くなったときは、妻の親族ではなく、自分の親族に相続させたいというケース[図表1]を見てみましょう。
この場合、遺言がないとご自身が亡くなった際には兄弟姉妹にも4分の1の法定相続分があります。では、次に妻が亡くなったときのことを考えてみましょう。
この場合、妻の相続人は、妻の兄弟姉妹、甥・姪など、妻と血縁関係にある人になります。つまり、遺言を残していないと、
①自分が亡くなったときには、妻が相続で苦労する
②妻が亡くなると、先祖代々の土地が妻の身内に渡る
ということになります。一般的な遺言では、自分が亡くなった後の財産の配分しか決められないので、
●苦楽をともにした妻に財産をすべて残す
あるいは、
●土地や不動産など先祖代々の財産は自分の家系に、自分たちの代でつくり上げた財産は妻に残す
といったパターンになります。しかし、これでは、自分が亡くなった後は妻にすべての財産を渡し、妻が亡くなったらその後は自分の家系に渡すという、当初の望み通りではありません。
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行政書士松尾拓也事務所代表、有限会社三愛代表取締役
行政書士、ファイナンシャル・プランナー、相続と供養に精通する終活の専門家
行政書士、ファイナンシャル・プランナー、相続と供養に精通する終活の専門家。行政書士松尾拓也事務所代表、有限会社三愛代表取締役。1973年北海道生まれ。
父親が創業した石材店で墓石の営業に従事する傍ら、相続や終活などの相談を受けることが増えたため、すでに取得していた行政書士資格を活かし、相続・遺言相談をメイン業務として行うようになる。信条は、相談者からの困り事に「トータルで寄り添う」こと。
家族信託や身元保証など「新しい終活対策」についても積極的に取り組み、ライフプランや資産管理などの相談に応えるためにファイナンシャル・プランナー、住み替えニーズなどの相談に応えるために宅地建物取引士の資格を取得。ほかにも家族信託専門士、相続診断士、終活カウンセラー、お墓ディレクター1 級、墓地管理士など、終活にまつわるさまざまな資格を取得する。
経営する石材店では、おひとりさまやおふたりさまに好評な樹木葬や永代供養墓、ペットと一緒に入れるお墓など多様なニーズに応える墓苑を運営している。また、インテリアに合うモダンな仏壇の専門店も開設し、現代のライフスタイルに寄り添うご供養を提案している。
さらに地域ぐるみで終活に取り組む必要性にも着目し、他士業の専門家と連携した終活サポートチームを結成。終活セミナーなどの啓蒙活動に取り組むとともに、地域の行政に働きかけて独居高齢者の終活情報登録制度をスタートさせるなど、多方面で活動の場を広げている。
一人ひとりの「ライフエンディングシーン」(人生の終末期)で、最も頼りになるパートナーとなるべく、全方位視点で積極的な事業展開を行っている。趣味は本と酒と旅、ちょっと古めのクルマとバイク、座右の銘は「遊ぶように仕事し、仕事するように遊ぶ」。普段から「サムシングエルス(何か別の価値)を提供する」ことを大切にしている。
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