不動産投資で赤字が出た年も、個人なら給与と「相殺」可能
4.不動産所得を損益通算できる
黒「『損益通算』とは、1つの所得区分で出た損失分を他の所得から控除できる仕組みです。
たとえば、不動産投資を行って赤字が出たとしても、本業の給与所得があるのであれば損失分と相殺することが可能ということです」
――せっかく始めた不動産投資で赤字が出るというのはあまり考えたくないのですが、実際、赤字になることって多いんですか?
黒「不動産投資の場合、赤字になるというケースが結構あるんですよ。
たとえば、家賃収入からローンや諸経費を引いた金額がプラスだったとしても、減価償却費の計上などによって帳簿上は赤字になることがよくあります。また、修繕費がかかる年があれば修繕費のほうが利益よりも大きく、赤字になる年もあります。
こういった場合にも、『損益通算』をすることで課税所得を抑えることができます」
――なるほど。そう考えると活用する場面は多そうですね。
5.長期譲渡所得が適用される
――「長期譲渡所得」ってなんですか?
黒「不動産投資をしていると、もちろん死ぬまで保有していたいという方もいらっしゃいますが、一方で何年かして不動産を売りたいと思う方もいらっしゃいます。
このとき、不動産を売却して得た利益は不動産所得ではなく、『譲渡所得』として扱われます。不動産の売却で得た譲渡所得というのは『分離課税』なので、他の所得と合算されず、一般的な所得税率とは異なる税率が適用されます。
この税率は[図表2]のように、不動産の所有期間によって異なります。売却した年の1月1日現在で所有期間が5年以下の場合『短期譲渡所得』になり、税率は所得税と住民税合わせて約40%になります」
――約40%は大きいですね。
黒「一方、所有期間が5年を超えている場合、『長期譲渡所得』が適用され、税率は所得税と住民税合わせて約20%になります。
――約半分になっているじゃないですか!
黒「この制度は個人のみ利用可能で、法人にはありません。法人化すると譲渡益に法人税が適用されてしまうので、5年を超えて物件を売却する際は個人よりも不利になる可能性が高いです。
ただ逆にいえば、5年以内での売却については、法人の場合いまみてきた短期譲渡所得の税率40%ではなく法人税が適用されますので、税率は低くなります。
5年以内の短い期間で売却するのであれば、法人のほうが税金は安くなります」
――ということは、もし短期での売却を考えている場合は、法人化を検討してもよさそうですね。
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黒瀧 泰介
税理士法人グランサーズ共同代表/公認会計士・税理士
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