多くの企業が大失敗に終わった「アクティブシニアマーケティング」。この苦い経験から「消費をしない」というレッテルを貼られた高齢者たちは、広告・マーケティング業界や企業から切り捨てられてしまうことに……。本稿では、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを務めた経験もあるマーケティングアナリストの原田曜平氏による著書『「シニア」でくくるな! "壁"は年齢ではなくデジタル』(日経BP)から一部抜粋して、令和の「シニアマーケティング」の重要性について解説します。
令和は、「団塊ジュニアが高齢者になる」
では、高齢者は広告やマーケティングの世界で、このまま放っておかれてよいのだろうか。当然の話だが、そんなことは断じてない。そう言い切れる理由をいくつか挙げていこう。
最初に、言うまでもなく、高齢者の全人口に占める割合は今後も増え続けるからだ。高齢者(65歳以上)の人口は、3623万人(23年9月15日時点の推計)で、総人口に占める割合は29.1%と過去最高を記録している。
75歳以上の後期高齢者の人口は、初めて2000万人を超えた。団塊の世代が22年から75歳を迎えていることが要因と考えられる。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、高齢者の割合は今後も上昇を続け、第2次ベビーブーム期(1971〜74年)に生まれた「団塊ジュニア世代」が65歳以上となる2040年には34.8%、2045年には36.3%になると見込まれている。すなわち、令和時代は世代論的観点からひと言で表現すれば、「団塊ジュニアが高齢者になる時代」だ。
今こそ、平成時代に敗北したトラウマから抜け出し、令和の時代の新たなシニアマーケティングに取り組むべき時を迎えている。
原田 曜平
マーケティングアナリスト/芝浦工業大学デザイン工学部教授
マーケティングアナリスト/芝浦工業大学デザイン工学部教授
1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年に退職し、マーケティングアナリストとして活動。芝浦工業大学デザイン工学部教授、信州大学特任教授、レイヤーズ・コンサルティング顧問を務める。03年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』などがある。19年1月より渡辺プロダクションに所属し、フジテレビ「新・週刊フジテレビ批評」、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」、NHK「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」などに出演。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載『「シニア」でくくるな! "壁"は年齢ではなくデジタル』