『噂の!東京マガジン』『アタック25』はなぜ地上波から消えたのか? 〈高齢者の切り捨て〉に走った広告業界がいまだに抱える「平成のトラウマ」

『噂の!東京マガジン』『アタック25』はなぜ地上波から消えたのか? 〈高齢者の切り捨て〉に走った広告業界がいまだに抱える「平成のトラウマ」
(※写真はイメージです/PIXTA)

多くの企業が大失敗に終わった「アクティブシニアマーケティング」。この苦い経験から「消費をしない」というレッテルを貼られた高齢者たちは、広告・マーケティング業界や企業から切り捨てられてしまうことに……。本稿では、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを務めた経験もあるマーケティングアナリストの原田曜平氏による著書『「シニア」でくくるな! "壁"は年齢ではなくデジタル』(日経BP)から一部抜粋して、令和の「シニアマーケティング」の重要性について解説します。

TV局が「コア視聴率」を採用することの意味

コア視聴率とは、テレビ局によって多少異なるが、「13〜49歳の個人視聴率」と定義されることが多い。テレビCMのスポンサーである企業にとって、コア視聴率の対象となる視聴者は商品やサービスを買ってくれる購買力のある層とされる。

 

つまり、主なテレビ局は13〜49歳をターゲットとして番組を制作し、テレビCMを販売する方針としたのだ。つまり、それ以外となる50歳以上の中高年を、言葉を選ばずに言えば〝切り捨てた〞ということだ。

 

50歳以上と書いたが、実質的には高齢者を切り捨てたと同義だ。これは、アクティブシニアマーケティングの失敗と無縁ではない。この失敗によって、「高齢者は消費をしない」という印象が色濃く残り、企業側がテレビ局に対して、「消費をしない高齢者にテレビCMを打っても意味があるのか」と疑問を呈するようになったと考えられる。

 

テレビ局はそうした圧力を跳ね返すことができず、コア視聴率の採用と番組の若返りを決行せざるを得なくなった。

祭り上げられ、捨てられた高齢者

その結果、地上波から、高齢者向けの番組が一掃された。2021年、TBSで1989年から放送されていた『噂の!東京マガジン』は、BS‐TBSへの移行を余儀なくされた。

 

同年、テレビ朝日でも、『パネルクイズ アタック25』が46年の歴史に幕を下ろし(2022年BSJapanextで復活)、22年春、27年間続いた『上沼恵美子のおしゃべりクッキング』も打ち切りとなるなど、高齢者の視聴が多かった番組が軒並みBS送りか、終焉(しゅうえん)を迎えている。

 

また、24年3月、TBSの『サンデーモーニング』は司会の関口宏を降板させ、後任に膳場貴子を起用するなど、番組は続いても出演者の若返りは待ったなしで推し進められている。

 

その他の番組も、対象とする視聴者は40代以下の比較的若い世代で、出演者は若手の俳優やミュージシャン、お笑い芸人などがメイン。高齢者にファンが多い、文化人や芸能人は徐々に姿を見なくなっているのが実態だ。

 

その代わり、そうした有名人はBSで番組を持つケースが多い。関口宏はBS‐TBSで2つの番組の司会を担当することになり、武田鉄矢が司会を務めるBSテレ東の『武田鉄矢の昭和は輝いていた』が人気を博するなど、BSは高齢者のチャンネルとして存在感を高めている。

 

こうした流れを見ても分かる通り、高齢者は広告業界、マーケティング業界、企業の間で翻弄され続けている。端的にいえば、「勝手にアクティブシニアに祭り上げられ、消費しないからといって、勝手に切り捨てられた」わけだ。これは、高齢者にとっても、企業側、マーケティングや広告の業界側にとっても、不幸と言わざるを得ない。

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「シニア」でくくるな! "壁"は年齢ではなくデジタル

「シニア」でくくるな! "壁"は年齢ではなくデジタル

原田 曜平

日経BP

日本の若者研究の第一人者であるマーケティングアナリストがシニアを独自調査 健康・お金・人間関係の悩みなど……リアルなシニアの実態が浮き彫りに! これから"黄金期"を迎えるシニアマーケティングの新常識が学べる1冊 …

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