金貨の価値と魅力
前述のジョージ6世の5ポンド金貨のように、アンティークコインの魅力は見た目のデザインのよさもありますが、金属そのものの希少価値もあります。
アンティークコインは通常、金や銀でつくられますが、私は金貨がいいと思っています。理由は2つあります。
1.埋蔵量が限られている
2022年4月現在で採掘済みの金は約20万5,238トンで、価値は11兆9,000億米ドルを超えます(WGC〈World Gold Council〉の調査結果)。これまでに採掘された金の供給量は、オリンピック公式競技用プール3杯弱しかない上に、地球上に残る金の総量は7万トン前後と言われていて、プール1杯半です。
鉱山での生産によって毎年3,400トンの金が追加されており、単純計算すると残り20年ほどで地球上の金をすべて産出してしまいます。やがて金がこれ以上採掘できなくなったら、価格は今よりも上がっていくことが予想されます。
2.保存が楽
銀は空気中の硫黄分と反応し硫化銀の被膜をつくり、これが黒ずみとなり変色の原因になりますので、保存方法に気を使います。金はこのようなことがないので、銀に比べて保存が楽です。
アンティークコインを国別に見ると、フランスやロシアなどもありますが、やはりイギリスの人気が高いと言えます。特に、イギリスの造幣局であるロイヤルミントに在籍した伝説のデザイナー、ウィリアム・ワイオンの代表作である「ウナとライオン」「ゴチック・クラウン」「スリー・グレイセス」は、今でも根強い人気があります。
1839年、ヴィクトリア女王の即位を記念して発行された「ウナとライオン」ですが、2019年に復刻版として再発行されたものでも入手困難で、世界中で高値で取引されています。右手に笏を持ったヴィクトリア女王がライオンを率いていますが、ライオンはイギリスの国の象徴であり、ヴィクトリア女王がイギリスを率いていく先を示していると考えられます。まさに、イギリスそのものを象徴した金貨です。
スリー・グレイセス、ゴチック・クラウンも、ウナとライオン同様に復刻版として2020年、2021年に再発行されましたが、いずれも高い人気を誇ります。どのコインもデザイン性が素晴らしく、多くの人がその価値を認めており高値で取引されています。
松田 二朗
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