過少申告とは?
確定申告はしているものの、本来よりも所得額・納税額を低く申告することを過少申告と言います。過少申告の中には、実際よりも売上額を低く計上したり、経費を水増しして計上したりするなどして、所得額を低く見せかけているケースもあるでしょう。また、意図的ではないものの、誤って納税額を過少に申告してしまう場合も考えられますが、ミスであっても納税額が不足していれば過少申告に該当します。
過少申告をしていても、税務署にはバレないと思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、過少申告はバレる可能性が高いです。
今回は、過少申告がバレる理由や過少申告が見つかった場合に科せられるペナルティについてご説明します。
過少申告が税務署側にバレる理由
過少申告が税務署にバレる理由としては主に次の5つが考えられます。
【理由①】税務調査でバレる
税務署では納税義務のある法人や個人事業主を対象に税務調査を行います。税務調査は、確定申告の内容が正しいか、正しく納税しているかを調べる調査です。
税務調査の際に、契約書や見積書、請求書、領収書などと帳簿の内容を詳しく確認していくと、売上を過少に申告していたり、経費を過大に計上していたりといった行為が発覚します。
調査官はさまざまな法人や個人事業主を対象に調査を行っているため、過少申告を見逃すことはありません。
【理由②】銀行の入出金情報や資産状況でバレる
税務署には、銀行などの金融機関の口座を調査する権限があります。したがって、事業は赤字として申告されているにもかかわらず、法人の口座や経営者・事業主の口座に不自然な入出金履歴があった場合などは、過少申告など、不正な申告をしているのではと疑われるでしょう。
また、不動産を購入したことがきっかけで過少申告がバレるケースもあります。確定申告の内容と照らし合わせた場合に購入資金の出どころが疑われ、調査の結果、過少申告がバレるのです。
【理由③】関係者や第三者からの密告でバレる
関係者からの内部告発や第三者からの密告も過少申告がバレる原因の1つです。内部の事情を知る関係者が、不正行為を知り、税務署に報告をするケースもあります。また、取引先などやライバル会社などが不正行為に気が付き、密告をするケースも少なくありません。
国税庁では、過少申告や脱税などに関する情報の提供を積極的に募集しており、ウェブサイト上には簡単に情報提供を行えるフォームも用意しています。この情報提供フォームでは、提供者の名前や連絡先などの記入は任意となっており、匿名でも情報提供ができる仕様です。そのため誰でも、個人情報の流出を気にせず、気軽に情報を提供しやすくなっています。
税務署では情報提供を受けると、該当する法人や個人事業主を対象とした詳しい調査を行うため、その結果、過少申告がバレるケースがあります。
【理由④】取引先の税務調査でバレる
取引先が税務調査の対象となった場合、取引相手や取引の内容が詳しく調べられます。その結果、その企業の取引先が税務調査となるケースがあるのです。例えば、税務調査で外注費などの多額の支払い履歴があったにも関わらず、外注費を受け取った側の申告内容と矛盾が生じているケースなどは、税務調査につながりやすいでしょう。
取引先の税務調査によって過少申告がバレる場合も珍しくはありません。
【理由⑤】SNSでの発信でバレる
SNSが隆盛の今、増えているのがSNSで自ら発信した私生活の内容で過少申告や無申告がバレるケースです。都心のタワーマンションに住んでいる様子や高級ブランドの靴やバッグを多数所有している様子、海外に頻繁に訪れている様子などが発信されていると、調査官の目に留まる可能性があります。確定申告の内容を調べれば、法人や個人事業主としての所得額はすぐに分かります。申告されている額と生活レベルが見合うものでなければ、過少申告等が疑われるでしょう。
税務調査で過少申告がバレた場合のペナルティ
過少申告がバレると、ペナルティとして「過少申告加算税」と「延滞税」が課されます。
■過少申告加算税
日本では、納税者が自ら税務署に所得などを申告して納税額を決定し、納税を行う申告納税制度が採用されています。加算税とは、申告業務が適正に行われていない場合に科せられるペナルティとしての意味合いをもつ税金です。
過少申告加算税は、法定期限までに納めた申告納税額が、本来の納税額よりも少なかった場合に課せられます。過少申告加算税の税率は、追加で納税する税額の10%です。ただし、期限内に申告した額と50万円のいずれか多い金額を超える部分についての税率は、15%となります。
例えば、当初申告した税額が300万円、修正後の課税額が500万円だったと仮定します。この場合、不足分の税額は200万円です。期限内に申告した300万円は50万円より多いため、このケースでは200万円の10%、つまり20万円が過少申告加算税の額となります。
また、当初申告した額が100万円、修正後の課税額が500万円だった場合は、不足分の税額は400万円です。この場合は、100万円までは10%、残り300万円については15%の税率がかけられ、合計55万円の過少申告加算税の支払いが求められることとなります。
■延滞税
延滞税とは、期限までに税金が納付されない場合にペナルティとして、利息に相当する税金の納付が課せられるものです。
延滞税の税率は、令和6年の場合、納期限の翌日から2ヵ月を経過する日までは年2.4%、2ヵ月を経過した日以降は8.7%となります。また、法定納期限の翌日から納付が完了する日まで課せられるため、修正申告が遅くなるほど課される延滞税の額は多くなるのです。
過少申告のペナルティを軽減するには?
過少申告をした場合、ペナルティが科せられます。しかし、過少申告をしていてもペナルティを避けられるまたは軽減できるケースがあります。それは、自主的に修正申告をすることです。
【方法①】自主的に修正申告をする
税務調査が行われる前に自主的に修正申告を行い、正しく申告をし直せば、過少申告加算税が課されることはありません。申告額が少なかったという自覚がある場合には早めに修正申告を行うようにしましょう。
ただし、税務調査を受ける前でも、事前通知を受けてから修正申告を行った場合は、過少申告加算税を避けることはできません。しかしながら、事前通知を受けてからでも自主的に修正申告を行った場合は、過少申告加算税の税率は50万円までは5%、50万円を超える部分については10%に軽減されます。
【方法②】税理士に相談する
過少申告をしてきた場合、税務調査で過少申告を指摘され、修正申告を行うとなると過少申告加算税と延滞税の納付が必要となります。過少申告であるにもかかわらず、放置をしておけば延滞税がかさみ、納税の負担はどんどん大きくなるでしょう。
ペナルティを避けるためにも、過少申告の状態にある場合にはできるだけ早く自主的に修正申告を行うことが大切です。しかしながら、長く過少申告を続けてしまった場合などは修正申告書を作る負担も大きくなります。修正申告までの時間が長くなればその分延滞税も増え、修正申告の準備をしている間に税務調査の連絡が入ってしまう可能性もあるでしょう。確実な申告書をできるだけ早く作成するためにも、税理士への相談をおすすめします。
過少申告に気づいたら、一刻も早く修正申告を
過少申告とは、所得額と納税額を本来よりも少なく申告することです。過少申告は、税務調査や銀行の入出金の情報、関係者からの密告、取引先の税務調査などからバレます。過少申告がバレた場合のペナルティは、過少申告加算税と延滞税などの加算です。
延滞税は正しく納税を終えるまで加算され続ける税金であり、修正申告が遅くなるほど納税額は増えてしまいます。過少申告をしてきた場合や過少申告の恐れがある場合などは早めに税理士に相談し、過少申告加算税が課されないよう、税務調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告を行うことをおすすめします。
松本 崇宏
税理士法人松本 代表税理士
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴税額ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本
税務調査特化税理士法人として全国6ヵ所(渋谷、錦糸町、新宿、横浜、柏、大阪)にオフィスを構え、“成功報酬型”税務調査サポートを提供する税理士事務所では国内No.1の規模を誇る。国税局に勤めていた、いわゆる「国税OB」が複数名所属。税務調査相談実績は累計1000件以上。一般業種より税務調査が厳しいと言われる風俗業界の税務に10年以上特化し、追加徴税額ゼロ円の実績も多数。
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