●日経平均はレンジ相場を上抜け一目均衡表も上昇トレンドを示唆するなか40,000円台を回復。
●日経平均の上昇をけん引した主体はJPXのデータ待ち、売り越し基調の海外投資家には要注目。
●先物主導なら上昇は一時的、株高持続には企業業績、企業改革、賃金のさらなる進展が必要。
日経平均はレンジ相場を上抜け一目均衡表も上昇トレンドを示唆するなか40,000円台を回復
7月2日の日経平均株価は3営業日続伸し、前日比443円63銭(1.1%)高の40,074円69銭で取引を終え、3月29日以来、およそ3ヵ月ぶりに終値ベースで40,000円の大台を回復しました。今回のレポートでは、この背景と今後の展望について考えます。日経平均は5月以降、おおむね37,600円から39,400円のレンジ内での推移がしばらく続いていましたが、先週6月26日に、このレンジを明確に上抜けました。
5月27日付レポートで紹介した一目均衡表をみると、7月2日時点で、①転換線が基準線を上抜け、②遅行線が日足を上抜け、③日足が雲(先行スパン1と先行スパン2に挟まれた領域)を上抜けており、「三役好転」という非常に強い買いシグナル(上昇トレンド)が確認されます(図表1)。このようなテクニカル要因も、日経平均が再び40,000円台を回復した背景にあると推測されます。
日経平均の上昇をけん引した主体はJPXのデータ待ち、売り越し基調の海外投資家には要注目
先週から今週にかけて、どのような投資主体が日経平均の上昇をけん引したかについては、日本取引所グループ(JPX)が毎週公表している「投資部門別売買状況」のデータを待つことになります。6月第4週(24日~28日)分のデータは7月4日、7月第1週(1日~5日)分は7月11日に、それぞれ公表される予定で、海外投資家や個人、事業法人の売買動向が注目されます。
6月第3週(17日~21日)まで、海外投資家は現物を5週連続で売り越していますが、個人は3週連続で買い越し、事業法人は12週連続で買い越しています。6月第4週と7月第1週の焦点は、海外投資家の売り越し基調に変化がみられるか否か、分配金の再投資が指摘される個人の買い越し基調が続くか否かであり、事業法人は自社株買い中心の安定的な買い手であることが確認されると思われます。
先物主導なら上昇は一時的、株高持続には企業業績、企業改革、賃金のさらなる進展が必要
なお、「裁定買い残」から、「裁定売り残」を差し引いた「ネット裁定残高」をみると、足元で増加していることが分かります(図表2)。例えば、海外投資家などの先物買いで先物価格が上昇した場合、裁定業者(主に証券会社)が先物を売って現物を買う「裁定買い」取引を行うと、裁定買い残が増え、ネット裁定残高の増加要因、現物価格の上昇要因となります(裁定売り取引はこの逆)。
日経平均の上昇は、このような先物主導の場合、一時的なものとなりやすいため、JPXが発表するデータは現物だけでなく先物についても確認が必要です。日経平均が持続的に上昇するためには、6月26日付レポートで解説した通り、企業業績、企業改革、賃金についてのさらなる進展が条件になると考えていますが、それは7-9月期中にも確認される公算は大きいとみています。
(2024年7月3日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【3ヵ月ぶり】日経平均「4万円台」回復…今後どうなる?プロが教える「株高持続」の条件【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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