(※写真はイメージです/PIXTA)

「令和5年退職金、年金及び定年制事情調査」(中央労働委員会)によると、令和4年度の定年退職者への平均退職金支給額は約1,878万円でした。退職金はまとまった金額が手元に入るタイミングですが、使い道を誤った結果、老後破産の危機に陥るケースも少なくありません。65歳で定年退職を迎えた父親とその息子の事例をもとに、詳しくみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。

なんで突然…拓也さんが唖然とした父親の「告白」

拓也さんが帰省し、久しぶりに3人でささやかなパーティを楽しんでいました。

 

拓也さんはこれまで家族のために朝早くから夜遅くまで仕事を頑張ってくれていた父親を尊敬していました。そんな父親には老後ゆっくりしてほしいという思いから、なにげなく「定年後はどうするの? 母さんと旅行でも行くの?」と聞いてみました。すると、なぜか父親は言葉を濁します。

 

不審に思った拓也さんが「ん? どうしたの? なんか浮かない顔してるけど」と突っ込んで聞いてみても、父は黙ったきりです。

 

しかし夕食後、父は拓也さんと2人きりになったタイミングで、ぼそぼそとこう言いました。

 

「あのな……、退職金のことなんだけど。実は、投資にな……」

 

聞けば、退職金2,500万円のうち2,000万円を、たった1ヵ月間で投資に回したというのです

 

拓也さんは、上司や知り合いから話を聞き、新卒3年目のころからNISA(少額投資非課税制度)を使い、毎月株式や投資信託に投資を行ってきました。投資を始めて5年ほど経ち、「ようやく自分なりの資産形成の方法がわかってきたな」と感じていたところです。

 

一方で父は、投資の「と」の字も知らないはず。いきなり2,000万円もの大金を投資に回したことを知り、拓也さんは愕然。「ちょ、ちょっと待って、なんで突然……」と、絞り出すように言うことしかできませんでした。

 

プライドが邪魔をして…「約5%の評価損」が許せず、追加で1,000万円投資

投資を始めた理由を、父は次のように話しました。

 

退職する数ヵ月前から、証券会社の営業マンAさんが実家を訪問するようになったそうです。Aさんは拓也さんと年が近く、親近感が沸いた父は、退職金が入ったタイミングで投資を始めることにしたとのこと。

 

最初はAさんおすすめの個別株と投資信託、外国債を計1,000万円購入。しかしタイミングが悪く、たった数日で約5%の評価損となってしまいます。父親はその負けを取り戻すため、追加で投資。複雑な金融商品にも手を出しました。

 

真面目でプライドの高い父親は、息子と同世代の営業マンの説明に対して「よくわからない」とは言えなかったとのこと。あげく「損をしている」という状況が許せず、ムキになっているようです。

 

「父さん、目を覚ましてくれよ……」拓也さんは懇願します。

 

両親の今後の生活が心配になった拓也さんは、なんとか父親を説得。以前からの知り合いであるFPのもとへ、親子で相談に訪れました。

 

次ページ父親の「無知×プライド」が引き起こした“悲劇”

※プライバシー保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。

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