(画像はイメージです/PIXTA)

自身の資産形成に役立てるため、また、定年退職後の独立開業を目指すため、FP資格の取得を検討する方が増えています。実は、FP資格試験の出題領域は非常によく整理されており、お金について「ぜひ知っておきたいこと」が明確になっているのです。具体的に見ていきましょう。自身もFP資格を保有する、税理士・公認会計士の岸田康雄氏が平易に整理・解説します。

お金について体系的・効率的に学ぶ方法

FP資格の出題テーマは、個人の資産管理やライフプランニングに関する基礎的な知識を問うものとなっており、お金の知識についても効率的に学べる構造になっています。ここでは、ファイナンシャル・プランニング技能士3級試験を例に、試験の具体的な内容から、学ぶべき項目について見ていきたいと思います。

 

学科試験の出題範囲は、下記の6つの分野に分かれています。

 

①ライフプランニングと資金計画

②リスク管理

③金融資産運用

④タックスプランニング

⑤不動産

⑥相続・事業承継

①ライフプランニングと資金計画

ライフプランニングでは、人生の各ステージ、すなわち、若年期、中年期、老年期における必要な資金計画の理解が求められます。

 

教育費、住宅購入、退職後の生活資金など、目的別の資金計画を策定すること、収支計画の作成方法、ライフプランニングの手法、社会保険、住宅・教育の資金計画が出題されます。なかでも公的年金の給付、特に老齢給付と遺族給付がよく出題されます。

 

ファイナンシャル・プランナーは提案書を作成し、お客様のライフプランに基づいた資金計画を提示します。この計画は、住宅購入、子どもの教育、老後の生活資金に関わるものであり、客の現状、必要資金、資金調達方法を明確にします。

②リスク管理

リスク管理では、死亡、疾病、失業など様々なリスクへの対策としての保険の役割と種類を理解することが求められます。その手段となる保険商品の選択基準と適切な保険金額の計算方法、生命保険、損害保険の商品の特徴、契約者保護に関する制度がよく出題されます。

 

生命保険商品には、定期保険、終身保険、養老保険に分けられ、個人年金にも様々な商品が存在します。これらの商品は、ファイナンシャル・プランナーをはじめとする多くの専門家によって販売されています。

 

損害保険は、偶発的な事故や災害から生じる損害を補償する保険で、火災保険、自賠責保険、PL保険などが含まれます。

③金融資産運用

金融資産運用では、金融商品の選定や運用に関する基本的な理解が求められます。株式、債券、投資信託など基本的な金融商品の特徴、リスク及びリターンの関係、資産運用における分散投資の重要性、金融市場の動向とポートフォリオ運用がよく出題されます。

 

ここでは複利の理解が不可欠となります。利回りとは、一定期間運用した元本に対して、運用期間中に得られた利息と、元本に係る損益の合計額の割合を、1年あたりに換算したものをいいます。

 

複利とは、一定期間ごとに支払われる利息を元本に加えて、これを新しい元本と考えて利息を計算する方法です。利息も元本に加えられるため、利息が増えることになります。それゆえ、単利よりも複利のほうが有利となります。金融商品に投資する場合、基本的に複利を使って利回り計算を行います。

④タックスプランニング

タックスプランニングでは、所得税、住民税、相続税など税金の種類と計算方法についての理解が求められます。ここでは、個人事業主に適用される所得税の基本や節税手法が出題されます。3級では法人税は出題されません。

 

所得税は、個人が1年間で得た所得に対して課される税金です。所得税の計算では、所得を10種類に分類して計算します。利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得があります。

 

最終的な所得税額は、課税所得金額に累進課税率を適用して計算されます。累進課税は所得が増えるほど税率が高くなる仕組みです。一方、分離課税の所得には異なる税率が適用されます。

⑤不動産

不動産では、不動産取引の基本を理解することが求められます。ここでは、不動産市場と関連法規、不動産の評価方法と価格決定要因、建築基準法や区分所有法などの法律に関する問題がよく出題されます。また不動産仲介業を営む人たちに関する宅地建物取引法に関する問題も出題されます。

 

建築基準法には、街並みや道路環境をととのえるために、敷地と道路に関する基準や、建物の用途・建ぺい率・容積率・高さ制限など、建物の用途や形態に関する規定があります。主な規制として、用途制限、接道義務、建蔽率、容積率、建築物の高さ、防火規制などがあります。

⑥相続・事業承継

相続・事業承継では、法定相続情報、遺言書など民法の基本の理解が求められます。ここでは、相続や事業承継に関する基本的な知識、特に贈与・相続の法律と税金に関する問題がよく出題されます。

 

民法には法定相続人が定められています。法定相続人には配偶者、子ども、親、兄弟姉妹が含まれ、特に配偶者は必ず相続人になります。相続の優先順位は、まず子ども、次に親、そして兄弟姉妹と決まっています。

 

相続税の対象となる財産は、本来の相続財産とみなし相続財産に分けられます。本来の相続財産には、土地や株式など価値のあるプラスの財産と、借入金などマイナスの財産があります。みなし相続財産には、死亡保険金や退職金など、被相続人の死によって取得する財産があります。

実技試験の出題範囲と、学科試験・実技試験の概要

試験に関心がある方のため、実技試験の出題範囲と、試験の概要について見ていきましょう。

 

実技試験の出題範囲は、試験を実施する団体によって異なり、3種類の形式があります。

 

まず、金融財政事情研究会、きんざいが実施する試験には、個人資産相談業務と保険顧客資産相談業務の2つのタイプがあります。一方で、日本FP協会が実施する試験は、資産設計提案業務です。それぞれの試験形式は異なりますが、いずれも実際の事例に基づいて問題が出題されます。

 

試験の形式ですが、学科試験は、パソコンに表示される試験問題に対してマウスやキーボードを使って解答する形式で行われます。出題形式は○×式と三答択一式です。

 

実技試験も同様に、パソコンに表示される試験問題に対してマウスやキーボードを使って解答します。実技試験では、事例形式で5題の問題が出題されます。

 

合格基準については、学科試験は60点満点中36点以上の得点が必要です。一方、実技試験は100点満点中60点以上の得点が必要です。これらの基準をクリアすることで合格となります。

 

受験資格については、「FP業務に従事している者または従事しようとしている者」とされていますが、実際には誰でも受験可能です。特定の業務経験や資格が必要なわけではないため、多くの方が受験できる試験となっています。

 

このように、ファイナンシャル・プランニング技能士3級試験は、個人の資産管理に関する基礎知識を問う内容で構成されています。試験の範囲や形式、合格基準を理解し、適切な準備をすることで、試験に合格することができます。

 

 

岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

 

★ファイナンシャル・プランニング技能士3級試験の全体像はこちらをチェック!

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