夫の病気で判明した、長女のホンネ
ところが、長女が社会人1年目になったとき、転機が訪れます。山田さんの夫ががんの宣告を受けたのです。
「会社の検診で再検査の通知があり、軽い気持ちで受診したら、がんでした。とはいえ、そこまで深刻なものではなく、通院しながら治療を受けていたのです」
社会人となってひとり暮らしをしている長女も、父親を心配して実家に戻り、家族でひと時一緒に過ごしていました。
「夫と下の娘がそれぞれ自室に引き取り、長女と2人きりになったタイミングがあったのです。そうしたら、長女がビックリするようなことを言い出して…」
「〈パパが死んでも、妹は遺産を相続しないよね? 渡さないよね?〉というのです。〈お母さんとは血がつながってるから、お母さんの財産が妹に行くのは納得できるけど〉と…。思わず絶句しました」
「2人は同等に扱うつもりです」「きょうだいはむずかしい…」
山田さん夫婦は、姪っ子を引き取ったときに養子縁組をしていました。
「〈陽子ちゃん(妹)は、養子縁組をしているから、パパとママの子どもで、あなたと同じ立場なのよ〉って説明しました」
すると、長女はボロボロ泣きはじめてしました。
「〈妹のために、私はいろいろなことをがまんさせられてきた〉というのです。確かに、希望の大学は、ひとり暮らしさせる余裕がなくあきらめてもらいました。習い事も、上の子だけ自由にやらせるわけにはいきませんから、ガマンさせたこともあります」
「夫はそこまで高給取りではありませんし、私も下の子を引き取ってからはパートしかしていません。でも、一般的な生活レベルだと思います。子どもにがまんさせるにしても、どこの家でもあることではないでしょうか…」
山田さんは、遺産相続は姉妹同等にするつもりであり、今回の長女の発言は、自分の胸に一生しまっておくといいます。
「子どもは2人とも本当にかわいいです。それが本音です。でも、子どもたちの側から見たら…。むずかしいですね…」
もしかしたら、どこの家庭にも、このような「納得できない」思いが、ひそかに積み重なっているのかもしれません。
[参考資料]
法テラス「養子の相続分は、実子の相続分とは異なるのですか。」
法テラス「法定相続人とは何ですか。」
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