同族経営が倒産する理由は「内部要因」ばかり
前回の続きです。同族経営による問題点は、以下の10といわれています。
①創業経営者の高慢、経営能力の過信
②同族経営によって、血族以外の者への社員教育の不備や欠如
③同族経営の支配自体が事業目的となり、事業目的・目標・計画性が欠如する
④同族経営者のみが情報を独占し、社内情報の不足と環境変化への対応が低下する
⑤独占経営による、新規事業開拓と新規顧客開拓および技術開発の遅延
⑥家庭不和による、経営者一族による経営混乱の弊害
⑦公私混同による企業資産・資金の横領
⑧同族以外の人間を動かすための経営理念と哲学の欠如
⑨経営の数値化および可視化の不足・勉強不足
⑩ワンマン経営による反省心の不足
これらから同族経営の問題として、3つがあげられます。第一は、先に述べたように、同族経営が倒産したり破綻したりする要因は内部要因ばかりであり、外部要因がないことです。
第二は、倒産の原因は直接・間接や遠因を問わず、全て経営者のトップたる社長に起因していることです。プロ野球の野村監督は「再生屋」として、リーグ最下位球団を外様として入って何度も優勝させました。
一方で、第一次長嶋監督は、V9を達成した川上巨人軍を翌年最下位にしてしまいました。「魚は頭から腐る」という諺がありますが、企業も腐る時は必ず頭(トップ)から腐ります。
そして、第三点では、同族経営になると経営の方向性が不明確になることです。企業が生き延びるためには、環境適応能力こそ最も大切にすることです。上の10の条件でいえば、⑤の新規事業開拓と新規顧客開拓がこれに相当します。そのために③である事業目的・目標・計画性の欠如が起きてしまうのです。これによって、⑧の経営理念の欠如が発生します。
「会社は従業員のものだ」ということを忘れない
もう一度、Oさんの例に戻りましょう。そもそも、蕎麦屋の創業者である赤の他人からOさんが事業の委譲を受けたことを忘れてはいけません。
蕎麦屋から天丼屋にかえて新規事業開拓を行い、出前という新規顧客開拓をしたことが、事業継承が上手くいったことなのです。Oさんが自分一人で作った会社と資産ではないのです。そもそもは、赤の他人から譲り受けた会社なのです。
Oさんの事例では、幸せの6つの条件のうち、④精神と倫理面、⑤教養と教育面、そして⑥心身の健康が足りないことは先ほど述べました。
会社は自分のものではない、従業員のものであるという倫理面がないこと(④)、事業を継続させた長女と次男に対する帝王学という教育をしていないこと(⑤)、そして本連載で繰り返しのべている医学的健康である介護を受けていたこと、そして高齢と病気による体の衰えから心の衰えをきたしたことです(⑥)。
このような事態に想定し、我々法人では、先に述べたような経営のコンサルティングに加え、いざという時の「プライベート秘書サービス」を行っています。例えば、万が一を想定して相続対策、遺言、そして介護援助サポートを行うことです。これらに関しては、後の章で詳しく述べます(本書籍をご覧ください)。