税金はビジネス環境を整えてくれた社会に対する「配当」
次に、資産性の軸において反対に位置するものとして、地方都市など、人口が減少していく日本の中で、将来的な需要に対するリスクが高い立地がまずは思い浮かぶかと思います。
その他にも、相続税という観点から、保有資産を評価したとき、相続税評価の低い物件、すなわち「節税」目的の物件という見方もできるかと思います。
相続税対策として、相続資産の評価総額を小さくしようとすると、時価と相続税評価との乖離の大きな物件を探すことになり、本質的な価値とはズレた方向へと進んでいきやすい傾向があります。
少し脱線しますが、いわゆる節税対策として世間で流行しているものとしては、次の3つの方法を挙げることができます。
① 相続税対策として、相続税評価の低い物件を狙う(路線価の狭間物やタワマン上層階)。
ただ、この方法には法改正リスクが伴います。抜け穴を狙っているのだから、公平・公正を旨とした税の観点からすればそれは当たり前だと言えます。
② 資産性の高い土地で償却効果を獲得するために、建物対価(建築費)の大きな新築ワンルームを狙う。
③ 高い利回りと償却効果を得るために、地方の中古木造アパートを狙う。
節税や転売益は、あくまでも不動産投資の本質的な意味、価値を実現した結果としての「効果」であると捉え、「良い物件を長く所有することで住民の幸福を実現しながら、安定した資産価値と着実な賃料収益の両立を図ること」が新富裕層にとって大事なことと考えています。
税金もコストと考えるのは、人件費をコストと考える外資系企業にとっては納得のいく考え方かもしれません。
しかし、「従業員は資産」と考える日本人のメンタリティにとって、税金はビジネス環境を整えてくれた社会に対する「配当」として、収益の中から当然に支払うものと考えることが、特に新富裕層の方々にはふさわしいのではないか、と思うのです。