(※写真はイメージです/PIXTA)

投資を始めたいと思っても、初心者には一体どれがいいのかわからないですよね。足立公認会計士事務所代表の足立武志氏は、著書『お金偏差値30でも始められる 株式投資の教科書』の中で「初心者は株式投資が向いている」と主張しています。それはなぜでしょうか? 理由を本書から紹介します。

FX投資は短期売買になりがち

個人投資家の間では、株式への投資ではなくFX投資を始める、という声もよく聞きます。FX取引は、レバレッジをかけないとほとんど動きがないので、高いレバレッジをかけて運用します。しかしその結果、短期的な為替の変動要因により、大きな損益が一瞬にして生じることも多々あります。

 

そして為替市場は24時間動いています。日本のマーケットが閉まって日本が夜中の時間であっても、米国のマーケットが開いているため、いつ大きな為替の変動が起きてもおかしくないのです。落ち着いて寝ることもできないからFX取引をやめた、という人も少なくありません。

 

そのためFX投資は、じっくり長期間ポジションを持ち続けるというよりは、デイトレードやスイングトレードのように短期間で完結させることが多くなります。特にデイトレードであれば、ポジションを有している間は、基本的に為替の動きを見ている必要があります。

 

もちろん、ロスカット注文(「ここまで下がったら損失が出ても売る」という損切りの注文)などを事前に入れておけば、四六時中パソコンの前に張りつくことは避けられますが、それでも短期間に取引を完結させることには変わりないですから、結構せわしないと思います。

 

そして株式投資と異なり、FXはどちらかがプラスになれば、もう片方は同じだけマイナスになるというゼロサムゲーム(投資参加者の利益と損失の総和がゼロになること)ですから利益が得にくいです。ちなみに株式投資は企業価値が上昇すれば株価も上がりますからプラスサムです。株式投資の方がFXより利益を上げやすいと思います。

 


●レバレッジ 自らの元手を担保に資金を借りるなどして、元手以上の取引を行うこと。株式投資における信用取引では元手のおよそ3倍、FXでは最大25倍の金額を投資できます。

 

●デイトレードやスイングトレード 1日の取引時間中(日本の株式市場の場合、午前9時から11時30分までの前場と午後12時30分から15時までの後場)に、何度も短期的な売買を繰り返すのがデイトレードです。数日から数週間程度の値動きを狙って売買する取引は「スイングトレード」と呼ばれます。

暗号資産はファンダメンタルの裏づけに乏しい

過去には一大ブームを起こしたこともある暗号資産。今でも取引を行っている方は数多くいます。暗号資産は株式に比べると、とにかく値動きが荒いです。しっかりと損切りをしないとあっという間に資産半減、ということもよく起こります。

 

もう一つ、暗号資産はファンダメンタルの裏づけに乏しいため、今ついている価格が適正値なのか、割高なのか割安なのかが判断できないという難点があります。株式であれば、業績に応じてあるべき企業価値というのがだいたい計算できますから、今ついている株価が割安か、割高か、という判断は比較的しやすいです。

 

しかし暗号資産は単なる通貨ですから、ファンダメンタル分析をして現時点での価値を把握することが困難です。価格の値動きが極めて大きく、価格が上下どちらに動くかも分からないというのが、投資初心者に暗号資産取引をお勧めしにくい理由です。

 

●ファンダメンタル分析 投資したいと思っている企業の業績や財務を調べたり、相場全体をとりまく経済情勢などを分析したうえで投資判断を下す手法のこと。純粋に、過去の株価の値動きから現在や未来の値動きの方向性を把握する「テクニカル分析」と双璧をなす株の分析法です。

少額でも可能で長期投資もできる株式投資は始めやすい

最後に、株式投資です。株式は、10万円出せば買える銘柄もたくさんあります。不動産投資のように大きな金額も必要なく、借り入れをする必要もありませんから初心者でも気軽に始めることができます。

 

また、FX取引のように短期間で取引をする必要もなく、じっくり何年も持ち続けることもできます。暗号資産と違ってファンダメンタル分析によって企業価値を調べ、株価が割安か割高かを算定することもできます。

 

不動産投資は値上がり益(キャピタルゲイン)よりも安定的な利回り(インカムゲイン)が得られる、というメリットは確かにあります。でも、無理に借り入れをして不動産投資をするのではなく、上場しているREIT(リート:不動産投資信託)に投資すれば、比較的高い利回りで少額でも不動産投資をすることができます。

 

税金面で考えても、不動産投資や暗号資産は最高税率50%超の総合課税ですが、株式投資やREITは20.315%の分離課税ですからメリットが大きいです。無論、株式投資でなければいけないということは一切ありません。しかし、大きな失敗をする可能性が他の投資より少なく、正しく取り組めば成果が出やすいという点で、やはり筆者としては株式投資をお勧めしたいのです。


●REIT(リート: 不動産投資信託) 多くの投資家から集めた資金で、オフィス、商業施設、マンション、物流倉庫などの不動産に投資し、そこから得た賃料収入を投資家に分配する金融商品のことです。中でも「J-REIT(ジェイ・リート)」は証券取引所に上場され、株式と同じように売買できます。

 

●分離課税 他の所得と分けて課税されることです。株式や投資信託の取引で得た値上がり益や配当・分配金収入は分離課税方式で課税されるのが一般的です(配当・分配金収入は総合課税も選べます)。分離課税の場合、その他の所得額に関係なく、投資で得た利益に対して所得税と復興特別所得税(2037年末まで)が15.315%、住民税が5%、合計20.315%の税金がかかります。

 

足立武志

足立公認会計士事務所代表 公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー 株式会社マネーガーディアン代表取締役

※本連載は、足立武志氏による著書『お金偏差値30でも始められる 株式投資の教科書』(扶桑社)より一部を抜粋・再編集したものです。

お金偏差値30でも始められる 株式投資の教科書

お金偏差値30でも始められる 株式投資の教科書

足立 武志

扶桑社

楽天証券の投資情報メディア「トウシル」で人気連載を持つ著者が伝授。 投資でお金をしっかり増やせる人になるために、新NISAが始まったいまだからこそ読みたい株式投資の教科書。 2024年2月22日、日経平均株価がそれまで…

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