取り調べで「黙秘します」は得?損?…”逃げる糸口”を決して見逃さない〈取調室〉の実態【事件に詳しい元新聞記者が解説】

取り調べで「黙秘します」は得?損?…”逃げる糸口”を決して見逃さない〈取調室〉の実態【事件に詳しい元新聞記者が解説】

刑事によって、2人一組で行われる取り調べ。犯罪者や容疑者は、往々にして自分に不利益な供述を避けようと必死になるそうです。しかし、取り調べで黙秘をすることは彼らにとって得なのでしょうか、損なのでしょうか。『三度のメシより事件が好きな元新聞記者が教える 事件報道の裏側』(東洋経済新報社)より、著者の三枝玄太郎氏が取調室の実情と判例について詳しく解説します。

ドラマの取調室は嘘だらけ?

ドラマでは、よく取調室にライトがあり、否認する容疑者の顔に当てたりしますが、これは実際にはありません。被疑者などが暴れたりすると困るため、必要最小限のもの以外はなく、机にはアルミ製の灰皿だけが置いてありました。

 

「記者さんは吸うかい?」と聞かれましたが、喫煙者ではないので断りました。取り調べはたいてい刑事2人一組で行います。殺人事件の場合ですと、1人が脅し役(厳しく追及する役)、1人がなだめ役に回ることが多いようです。

 

1954年に山口県で発生した一家6人殺害事件では、取調室の様子を録音したテーブが公開されましたが、刑事が「仏にすがれ、のう」とか、「僕にまかしなさい」とか「弱い心でどうする」などといろいろな角度から追及を試みていました(金重剛二「タスケテクダサイ」理論社、浜田寿美男『自白の心理学』岩波新書より)。

 

なお、赤坂署では6時間いた間にお茶は出されましたが、カツ丼は出ませんでした。警察ドラマの至宝『太陽にほえろ!』で下川辰平さん演じる長さんが、容疑者に「カツ丼でも食うか」というシーンが再三放映されたため、取調室といえば、カツ丼というイメージが私もあります。

 

食べたいときは、自腹です。刑事のポケットマネーで買い与えると、のちのち公判で「自供欲しさに利益供与したものだ」と、自白調書の任意性までが疑われてしまうからです。

 

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※本連載は、三枝玄太郎氏の著書『三度のメシより事件が好きな元新聞記者が教える 事件報道の裏側』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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