事件や事故の報道でよく目にする「命に別条はない」と「意識はある」、「重傷」と「重体」…それぞれの違いとは?【元新聞記者が解説】

事件や事故の報道でよく目にする「命に別条はない」と「意識はある」、「重傷」と「重体」…それぞれの違いとは?【元新聞記者が解説】

ニュースの中で「命に別条はありません」、あるいは「意識はあります」と報じられることがあります。また、「重傷」と「重体」という表現も頻繁に目にするでしょう。これらは具体的にどのような状態を指しているのでしょうか。三度のメシより事件が好きな元新聞記者が教える 事件報道の裏側』(東洋経済新報社)より、著者の三枝玄太郎氏がよく似ているようで同じではない「それぞれの違い」について詳しく解説します。

「命に別条なし」は元気ということ?

よく、被害者の安否に関して「命に別条はない」とか「意識はある」と報じられることがあります。

 

命に別条はないというのは、傷があったとしても急所を外れていたり、かすり傷だったりして、その後もまず容体は変わらないだろうという場合によく使われます。

 

一方の「意識はある」は、現場に駆けつけた救急隊員や警察官の問いかけに対して答えることができている状態と考えられます。つまり、ごくまれですが、搬送されたあとで容体が急変する可能性が残っているということです。

 

何か定義があるわけではないので絶対にそうだと言い切れるわけではないのですが、私が事件原稿を書く際には、このような意識で使いわけをしていましたし、周囲の記者もおおむね同じだったように思います。

 

一方、「重傷」と「重体」には明確な違いがあります。

 

2002年7月、東京駅構内のコンビニ「サンディーヌエクスプレス東京センター店」で、痛ましい強盗殺人事件が発生しました。パンやおにぎりを万引した男が、追いかけてきた店長の男性(33)をペティナイフで刺して逃走したのです。

 

首都の玄関口である東京駅構内だったこともあって、事件は大きく報道されました。第一報は「刺された男性には意識があり、病院に運ばれたが重傷」というものでした。

 

大きなけがをしているが意識があれば重傷、意識不明の状態になっていたら重体と表記します。店長は腹部を刺されていましたが、深さは約7㎝程度で傷が深いというほどではなく、当初は受け答えもできていたことから、警察は重傷と発表していたのです。

 

ところが刺されてからも犯人を追ったために出血が多かったのでしょうか。その後亡くなってしまいました。わずか550円の万引のために尊い命が失われ、容疑者の男は無期懲役刑が確定しました。おそらく今も刑務所で服役しているでしょう。

 

私もこの事件の第一報を聞いた当初は「重傷ということなら、きっと助かるだろう」と思っていました。ところが、数時間後に亡くなったと聞いて、大変驚いたことを覚えています。

 

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※本連載は、三枝玄太郎氏の著書『三度のメシより事件が好きな元新聞記者が教える 事件報道の裏側』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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