「デジタルタトゥー問題」や「“忘れられる権利”の裁判」の影響も?事件の容疑者宅の住所をぼかすようになった裏側【元事件記者が解説】

「デジタルタトゥー問題」や「“忘れられる権利”の裁判」の影響も?事件の容疑者宅の住所をぼかすようになった裏側【元事件記者が解説】

今でこそ事件の容疑者であってもプライバシーが守られていますが、25年ほど前までは自宅の住所の地番まではっきりと報道記事などに書かれていました。いったいなぜ住所をぼかすようになったのでしょうか。。今回は『三度のメシより事件が好きな元新聞記者が教える 事件報道の裏側』(東洋経済新報社)より、著者の三枝玄太郎氏が住所をぼかすようになった経緯を解説します。

容疑者宅の住所をぼかすようになった理由

大きな事件が起きると、報道陣が現場や容疑者の自宅に殺到しますね。容疑者が警察署にちょうど入っていく瞬間がニュースで流れることも少なくありません。なぜ、メディアはあれほど正確に、かつ素早く行動できるのでしょうか。

 

賢明な方々はお察しだと思いますが、警察が現場や関係者宅を教えているのです。それどころか、2000年ごろまでは、容疑者が逮捕されると「東京都千代田区霞が関1-1-1」というように自宅住所の地番まで詳しく記事に書かれていました。それで何の問題も起きなかったのです。

 

しかし、「あそこのアパートで殺人事件があったらしい」という風評が立つと、その物件はおろか周辺の賃料相場を直撃し、それまでの半値以下でしか借り手がつかなくなったりすることがあります。

 

瑕疵(かし)物件になったこと自体はどうしようもありませんが、「わざわざ記事にして、広くアパート名やマンション名を知らしめることはないじゃないか」とメディアに苦情が来るようになりました。面倒を避けようというので、「東京都千代田区霞が関」のように地番を抜いて報じるようになっていったのです。

 

最近では、住所だけではなく、容疑者の名前が伏せられて記事になっていることも結構あります。風営法違反、出資法違反、暴行のような比較的軽い犯罪に目立つような気がします。逮捕されても不起訴や処分保留になって釈放されそうだったり、起訴はされたけれども罰金刑で済みそうだったりする場合は、「会社員の男(58)」のように匿名で表記してしまうわけです。

 

かつては、警察は逮捕した容疑者の顔写真もかなりの確率で提供していました。暴力団の取り締まり強化月間などは組員がよく逮捕されるので、提供された顔写真を使って、自家製の暴力団組員リストを作ったものです。今ではそういうこともなくなりました。これには、ネット社会になって「デジタルタトゥー」という問題が出てきたことが影響しているのかもしれません。

 

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※本連載は、三枝玄太郎氏の著書『三度のメシより事件が好きな元新聞記者が教える 事件報道の裏側』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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