躍進する「プライベート・クレジット市場」
企業向けの債権やローンに限っても、2027年までに2兆米ドル超えの見通し
プライベート・クレジット市場が持続的に拡大しています。市場規模は2023年までに約1兆6,000億米ドル(日本円で約248兆円※1米ドル155円換算)にのぼり、米国のハイイールド債券市場に匹敵します。
さらに一部では、2027年までには2兆3,000億米ドル(日本円で約356.5兆円※1ドル155円換算)に達するとの見通しもあります。しかも、ここでいうプライベート・クレジットは企業向けの債権やローン(ダイレクト・レンディング)に限ったもの。
広義でのプライベート・クレジットは幅が広く、商業用不動産やインフラストラクチャー向けの貸付や債権、それからスペシャリティ・ファイナンスと呼ばれる消費者・住宅・商業向けのローン(消費者・自動車・住宅・中小企業向けローンなど)などと多彩です。
投資機会が広がる一方、「投資対象」の厳選が課題に
プライベート・クレジット市場の拡大は、投資家にとっては投資機会がいっそう広がることになりますが、一方で投資対象の厳選がより大切になるでしょう。
特に、高金利によって資本コストが「Higher for Longer(長期間にわたって高水準)」である状況が続くなか、高金利が重荷となる借り手も存在します。こうなると、貸し手にとってリスクが増大することになりかねないためです。
それでも、金利の先行きが明確になれば、プライベート市場全体の見通しや投資機会への視界も開けます。インフレ圧力による資産の再評価を踏まえ、中期的な金利や利回り水準のコンセンサスが形成されれば、プライベート市場全体での取引量は増えるでしょう。
「プライベート・クレジット」が拡大した背景
そもそも、プライベート・クレジットが拡大してきた背景には、銀行に対する資本規制の強化があります。
加えて中小の銀行は、資金調達ニーズへの対応も同時に迫られているため、貸し手にとって好条件での投資機会が広がり、リターン創出の可能性が高まると考えているはずです。
リスク管理能力に長けた経験豊富な貸し手にとって、これは朗報です。市場のユニバースが広がり、リスク・リターンに応じた魅力的な機会が生まれる点は、「Higher for Longer」の金利環境でもプラス面となります。