プライベート・クレジット※急拡大の背景
※プライベート・クレジットとは……非公開で組成、交渉される投資商品のなかでも、貸付債権といった信用リスクに根差した商品のこと。
プライベート・クレジットが急拡大してきた背景には、銀行のバランスシートの改善に向けた取り組みがあります。
銀行に対しては、金融危機を踏まえて一定以上の自己資本比率を保つ規制が課され、段階的に規制が強化され続けています。こうなると、多くの銀行が融資を一段と減らし、企業向けローンや住宅ローン、商業ローンの一部をバランスシートから切り離さざるを得なくなる傾向にあります。
さらには、金利上昇の影響も、銀行が資産規模を縮小させる傾向に拍車をかけています。米国では、2022年以降は銀行が保有資産の時価評価損を計上したことなどで預金が流出し、融資を大幅に減らしています[図表]。
銀行は単に資産を保有するだけではなく、ビジネスを動かしていく側に立とうとしています。これは銀行以外の融資元(レンダー)にとっては、市場や地域を超えて銀行と連携するチャンスが生まれることを意味します。
たとえば、多くのローンをひとまとめにして割安に購入する機会や、新規組成のローンを取得するためにリスク・シェアリング契約を結ぶといった魅力的な投資機会を獲得できます。
一方、銀行にとっても、資本規制を課されることなく、ローンの組成に伴う手数料収入を確保するメリットが享受できます。
2024年は、主要中央銀行の金利が高止まりする可能性が高く、一方で欧米には経済成長が鈍化する兆しがあります。ソフトランディングと予想されていますが、いずれにせよランディング(景気減速)すると私たちは見ています。
このことは重要で、仮に変化が緩やかだとしても、借り手のストレスが一段と高まる状況となる可能性が高まるため、信用リスクを効果的に引き受け、プライベート・クレジットを組成できる能力が問われると考えます。
プライベート・クレジットは当事者間で直接交渉して組成されます。つまり、借り手と出資者との意思疎通の機会が設けられ、起こりうる問題をあらかじめ回避することができるのです。こうした状況で有利になるのは、幅広い経験を積んだ運用会社と考えます。