容疑を“ほのめかす”供述、“自称”会社員のA容疑者…ニュースでよく聞く「それ、どういうこと?」を深堀り【事件に詳しい元新聞記者が解説】

容疑を“ほのめかす”供述、“自称”会社員のA容疑者…ニュースでよく聞く「それ、どういうこと?」を深堀り【事件に詳しい元新聞記者が解説】

毎日さまざまな事件のニュースが流れますが、捜査や取り調べに関する言葉には、よく聞くけれど実はよくわからないというものが多くあります。例えば「容疑をほのめかす」とは具体的にどういう状態なのか、「自称会社員…」はなぜ「自称」なのかなど……。『三度のメシより事件が好きな元新聞記者が教える 事件報道の裏側』(東洋経済新報社)より、著者の三枝玄太郎氏がそのあたりの実情を詳しく解説します。

逮捕のニュースでよく聞く、容疑者の「自称~」とは?

ほのめかしと多少関連しますが、逮捕のニュースで「自称・不動産業の〇〇容疑者は……」と報じられることがありますね。

 

「自称」とはいったいなんでしょうか。「自称じゃなくて、ちゃんと調べろよ」という声が聞こえてきそうですが、これも警察なりの事情があります。容疑者が逮捕され起訴されて、裁判所に舞台が移ると、検察官が冒頭陳述というものを読み上げます。

 

その際、「身上・経歴」という項目があり、容疑者(起訴されたあと裁判になると被告)の生まれ、育った地方、環境、家族構成、学歴、職歴などが明らかにされます。このことを想定して、警察は住民票で住所を確認し、身上経歴に関する供述調書(身上経歴供述調書)に謄写・添付したり、会社員ならその会社から在籍証明書のようなものをもらったりします。

 

自営業者ならば、登記簿謄本を添付するのが普通です。ただ、逮捕した時点では、こうした手続きが間に合わないことがよくあります。しかもたとえばブローカーのように、仕事の実態がよくわからなかったり、日ごろブラブラしているように見えて、一攫千金的に大商いをすることがあったりする人物の場合、無職なのか職業があるのか、警察としても判断に迷うときがあります。

 

そうした場合、容疑者が取り調べで「自分は不動産業です」と言ったとしましょう。会社のホームページも存在しないし、登記簿謄本をとっても該当がないが、まったく事業実態がないわけでもなく、近所の人も「不動産をやっているらしいですよ」程度のことは言っている……。

 

裏付けはまだ取れていないが、とりあえず本人がそう言っているから「自称・不動産業」としておくか、となるのです。自称・無職、自称・会社員、自称・会社役員などが多いですが、中には自称・水墨画講師、自称・占い師、自称・牧場作業員など、「たしかに確認に時間がかかるわな……」というケースもあります。

 


 

三枝 玄太郎

 

※本記事は『三度のメシより事件が好きな元新聞記者が教える 事件報道の裏側』(東洋経済新報社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

 

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※本連載は、三枝 玄太郎氏の著書『三度のメシより事件が好きな元新聞記者が教える 事件報道の裏側』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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