区分所有者や管理組合が建て替えに「後ろ向き」な理由
マンションストックの大部分を占めるデベロッパーが分譲した単棟型マンションでは、敷地と指定容積率をフルに使って建設しているため、建ぺい率や容積率の余裕がないのが普通である。
また、第一世代のマンションのなかには、建設後に容積率の引き下げや高さ制限が行われたことで、既存不適格となっているものもある。こうしたマンションは建て替えをしても従前の広さを確保できないことが多い。こうした場合でも共同建て替えや再開発事業をすれば容積率の割り増しなどを受けることができるが、このための合意形成は一棟のマンションの建て替えよりも難しいのが普通である。
ストックの大半をしめる余剰容積がないマンションの建て替えは、原則として区分所有者が費用の全額を負担しなければならない。その費用は引越しや仮住まいの費用を含め少なくとも2,000万円程度になるはずである。しかも、この場合は分譲できる住戸(保留床)がないため、デベロッパーの参加も得られないのが普通である。
これにくわえて、前述のようにマンション建て替えは自己負担なしできるという誤った理解が広まったため、建て替えに正面から向き合おうとする区分所有者や管理組合が少ない状態が続いている。
戸建て住宅であれば、当然、自分が資金負担をして老朽化した家を建て替えることになる。こうした常識が通用しにくいことが、マンションの建て替えを難しくし、状況を悪化させている。
「改正マンション建替え円滑化法」で変わったもの
こうした問題を緩和するため、2014年に施行された「改正マンション建替え円滑化法」により、耐震性不足と認定されたマンションを建て替えるとき、容積率の割り増しが受けられることになった。
これまでもマンションを建設する場合、公開空地を設けることで容積率の割り増しを受ける制度はあったが、敷地が広い場合に限られているため建て替え事業ではあまり利用されてこなかった。
今回の法改正では、規模の小さい耐震性不足のマンションの建て替えを促進するため、公開空地を設けることにこだわらず、備蓄倉庫や避難所にもなる集会所を設けるといった地域の防災向上に貢献することを条件に、容積率の割り増しが認められることになった。