飛行機の操縦席(コックピット)のような計器は不要
高配当利回りの銘柄にうまく投資できたとしても、すべてが順調に運ぶとは限らない。
たとえば、投資したときには高配当利回りだったとしても、10年のあいだに投資した銘柄の株価が大きく値下がりしたり、配当が減配や無配になったりするかもしれない。倒産や合併で、投資した銘柄の株価が紙くず同然になっているかもしれない。
そうしたリスクを減らすための最も有効な対処法は、投資の対象を「業界のトップ企業」に絞り込むことだ。業界のトップ企業といっても千差万別である。今後予想される急激な技術革新やグローバル競争の荒波と無縁ではない。
しかしどの業界でも、トップ企業には資本力や経営ノウハウ、人材がそろっている。下位の企業に比べ生き残れる可能性が高い。
たとえば繊維やカメラの銀塩フィルムのようにグローバル化や技術革新で業界全体が斜陽化しても、東レや富士フイルムのような業界トップ企業であればあざやかな業態転換によって企業としての生き残りをはかることができた。
業界のトップ企業のあいだで分散投資を行なえば、株価の変動や減配・無配のリスクを大きく減らすことができる。
さらに言えば、高配当利回り銘柄への投資の大きなメリットは、経済や投資に関する小むずかしい理論や知識、用語、財務指標など知らなくても高いパフォーマンスをあげることができる点だ。経済の素人にはうってつけの手法だ。
配当利回りは、すぐに計算できる。『会社四季報』のページをめくって年間の予想配当金を調べ、それを株価(時価)で割るだけだ。『会社四季報』にはROE(株主資本利益率)、ROA(総資産利益率)、CF(キャッシュフロー)、PBR(株価純資産倍率)、PER(株価収益率)などの指標がたくさん記載されている。
しかし株式投資の素人にはその意味や活用法がよくわからない。計算方法も面倒そうだ。だが心配しなくてよい。こうした細かな指標はプロ向けの情報である。個人投資家は知っておいて損はないが、知っているからといって投資のパフォーマンスが上がるとはかぎらない。
こうした数値は、飛行機の操縦席(コックピット)の無数の計器が発するデータと同じだ。専門のパイロットが最新鋭の大型旅客機を安全運航させるときには不可欠だが、私たちが自動車を運転する場合はハンドル、アクセル、ブレーキの位置とその使い方さえ知っておけば十分だ。
プロのディーラーやファンドマネジャーが短期間で多くの銘柄に投資しなければならない場合には必須の道具となるが、少数の銘柄しか投資できない私たち個人投資家には、ほとんど必要ないツールといっても言い過ぎではない。
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