支出のタイミングをずらして資金繰りの安定を優先
前回の続きです。
資金繰りができたところで、私はもう一度再生コストを見直しました。そこで問題視したのが、エレベーターのオーバーホールです。これだけで1000万円の支出ですから、タイミングをずらすことができればより資金繰りに安定感が出ます。
そこで私は、決算との兼ね合いでタイミングを決めることにしました。マンモス物件を購入した法人の決算は、11月末です。それを見越して、まずはエレベーター会社に「9月ごろに工事の時期を決める」と伝えました。今期、来期の業績次第で、実施時期を判断することにしたのです。
決算を確認し、私は1000万円の支出を12月まで遅らせることにしました。税金対策も可能になり、結果的には一石二鳥の「時間差戦法」となったのです。
物件の再生は毎月のCFで賄える範囲で行う
最終的に、マンモス物件の再生計画は以下のようになりました。
◆物件価格:1億9400万円(フルローンで購入)
◆諸経費:1200万円(物件価格の6%)
◆室内リフォーム費用:3400万円(約5ヶ月かけて実施→月額700万円)
※エレベーターのオーバーホール1000万円は延期
【支払い】
半年間は利子のみの支払い→ リフォーム費用の半額以上はキャッシュフローで対応
残り→ 他の物件からのキャッシュフローで対応
こうして、無理のない範囲で「最低限のリフォーム」をすることに成功しました。その結果、マンモス物件が人気マンションに再生できたのは先ほどお伝えした通りです。
物件を再生するうえで、忘れてはいけないのは「満室になるための最低限の投資」をすることです。再生物件には「大規模修繕を行い、一気にきれいにする」というイメージがあるかもしれませんが、一度に大きな工事を行う必要はありません。あくまでも事業として考え、月々のキャッシュフローで賄える戦略を練ることも大切です。
もうひとつ注意していただきたいのは、他の物件で満室になった事例は、あくまで「その物件」で通用した戦略だということです。世の中には、ひとつとして同じ物件はありません。さまざまな要素によって、勝てる戦略は変わってきます。思考停止してそのままマネするのではなく、効果の高い方法を費用を見極めて実施することが大事です。
もちろん、最初からリフォーム資金を含めた融資を受けられれば、それに越したことはありません。ただ、それができなくても必ずやり方はあります。最初は規模の大きさに思考が追いつかないかもしれませんが、工夫できる余地を探してみましょう。再生物件を上手に活用できることが、不動産投資の上級者への第一歩です。