1ドル150円超の「歴史的な円安」→企業は儲かり、家計は苦しい…個人が資産を守る“たったひとつ”の方法【マクロストラテジストが提言】

1ドル150円超の「歴史的な円安」→企業は儲かり、家計は苦しい…個人が資産を守る“たったひとつ”の方法【マクロストラテジストが提言】
(※写真はイメージです/PIXTA)

歴史的な円安が続くなか、大企業の経営者などによる“日銀批判”が目立ちます。しかし、実は円安の不利益のほとんどは「家計」が負っており、企業(特に大企業)は円安の恩恵をしっかり享受しているのです。では、円安によって苦しめられている個人が自らの資産を守るためにはどうすればいいのでしょうか。フィデリティ・インスティテュート主席研究員でマクロストラテジストの重見吉徳氏が解説します。

「円安の恩恵」を受けているはずの経営者が日銀を批判するワケ

これらすべてを我々家計よりもよく理解しているはずの大企業の同じ経営者の口から、円高のみならず、円安でも不満が出る理由がわかりません。

 

こういうと「程度の問題。もはや完全雇用であり、これ以上の円安もインフレも失業率を改善しない」と言われるかもしれません。ついでに「だからこそ人手不足で、国を挙げて外国人の雇用を増やすことを推進している」と付け足されるかもしれません。

 

しかし、日本国内にはまだ180万人を超える失業者がいます。いま新たに外国人労働者を受け入れるなら、それは労働供給の増加であり、国内の失業者が増えるか、賃金の伸びが抑制されるかですから、国内の家計にとっては「低いインフレ率と高い失業率」の組み合わせを選ぶことになり、過去30年に舞い戻るのと同じです。

 

大企業の経営者は、円安や日銀を批判するより、税収が増える政官を巻き込んで、円安と価格引き上げで得た利益を、負担が増える家計や中小企業に分配することを考えるべきでしょう。

 

こういうと「すでに大幅な賃上げを実施した。もうすぐ賃金の伸びが物価の伸びを上回る」と言われるかもしれません。

 

しかし、それはまやかしです。変化率と水準とは別物です。2022年初めから5%低下した実質賃金の水準を有意に回復するのは、この先実質賃金が年率2%で伸び続けたとしても、3年程度先の話です。

 

[図表4]日本の物価の伸び率と賃金の伸び率
[図表4]日本の物価の伸び率と賃金の伸び率

 

[図表5]日本の実質賃金指数
[図表5]日本の実質賃金指数

 

あるいは「円安で他国の需要を奪うことは長続きしない。だからこれ以上の分配はできない」と言うなら、自ら「円安はまもなく解消される」と述べているわけですから、日銀に利上げを求める必要はないでしょう。

 

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