年金で支えられている高齢者夫婦の生活。配偶者を亡くしたとき、世帯の収入は大きく減少し、それまでの生活を大きく変えなければいけない事態に見舞われるケースも。そこで当てになるのが「遺族年金」。亡くなった配偶者が老齢厚生年金を受け取っていたなら、残された遺族は遺族厚生年金を受け取れる可能性も。ただそこには複雑なルールもあるようです。
年金月15万円・71歳夫を亡くした妻、同じく夫を亡くした従妹から「遺族年金は月7万円」と聞いたが…年金事務所が教えてくれた「年金額」に絶句「うっ、嘘でしょ」 (※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者夫婦…夫を亡くすと世帯収入は大きく減少

老後、仕事を完全引退した際、生活のベースになるのは老齢年金。ほとんどの人が知っているように、老齢年金は国民年金がベースの老齢基礎年金と、厚生年金がベースの老齢厚生年金の2種類が基本となります。

 

老齢基礎年金は40年間、保険料を満額納付していれば、月額6万8,000円(令和6年度)を受け取ることができます。老齢厚生年金は納付した保険料によって金額は変わり、厚生労働省の調査によると、平均14万4,982円。65歳以上の人に限ると、男性で16万7,388円、女性で10万9,165円。これは併給の老齢基礎年金を合わせた金額。仮に満額受給だとすると、男性は10万円、女性は5万円ほどが老齢厚生年金の平均値だといえるでしょう。

 

一方、遺族年金も国民年金に由来する遺族基礎年金と、厚生年金に由来する遺族厚生年金の2種類。前者には子の要件があり、18歳以下の子どもがいない限りは対象外。老後に受け取る遺族年金は、遺族厚生年金のみと考えておいて問題はないでしょう。

 

遺族厚生年金の年金額は、「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」。老齢厚生年金の受給額は「報酬比例部分+経過的加算+加給年金額」であり、報酬比例部分は、「A:平成15年3月以前の加入期間」と「B:平成15年3月以降の加入期間」を足した、年金額の計算の基礎となるもの。ここまで聞くと少々難しいですが、おおむね老齢厚生年金の4分の3の額と覚えておいていいでしょう。

 

A:平均標準報酬月額×7.125/1,000×平成15年3月までの加入期間の月数

B:平均標準報酬額×5.4811,000×平成15年3月までの加入期間の月数

広く知られている「遺族年金は亡夫の年金の4分3」の勘違い

――遺族年金は亡くなった夫の年金の4分の3

 

そんな話が広く知られていますが、ここで気を付けたいのが、あくまでも老齢厚生年金の4分の3であるということ。これを併給の老齢基礎年金を足した金額の4分の3と勘違いしている人は多いよう。

 

亡くなった夫は年金月17万円。「遺族年金は12万円強になるのね」と思っていたら、実際は5万円近くも少ないわけですから、ビックリするはず。夫を亡くしたあとの生活にも影響を与える勘違いなので、しっかりと覚えておきたいものです。

 

神田良子さん(仮名・69歳)。1年前、3つ上の夫は心筋梗塞で急死。複雑な年金ルールに翻弄されたひとりです。