高齢者夫婦…夫を亡くすと世帯収入は大きく減少
老後、仕事を完全引退した際、生活のベースになるのは老齢年金。ほとんどの人が知っているように、老齢年金は国民年金がベースの老齢基礎年金と、厚生年金がベースの老齢厚生年金の2種類が基本となります。
老齢基礎年金は40年間、保険料を満額納付していれば、月額6万8,000円(令和6年度)を受け取ることができます。老齢厚生年金は納付した保険料によって金額は変わり、厚生労働省の調査によると、平均14万4,982円。65歳以上の人に限ると、男性で16万7,388円、女性で10万9,165円。これは併給の老齢基礎年金を合わせた金額。仮に満額受給だとすると、男性は10万円、女性は5万円ほどが老齢厚生年金の平均値だといえるでしょう。
一方、遺族年金も国民年金に由来する遺族基礎年金と、厚生年金に由来する遺族厚生年金の2種類。前者には子の要件があり、18歳以下の子どもがいない限りは対象外。老後に受け取る遺族年金は、遺族厚生年金のみと考えておいて問題はないでしょう。
遺族厚生年金の年金額は、「死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」。老齢厚生年金の受給額は「報酬比例部分+経過的加算+加給年金額」であり、報酬比例部分は、「A:平成15年3月以前の加入期間」と「B:平成15年3月以降の加入期間」を足した、年金額の計算の基礎となるもの。ここまで聞くと少々難しいですが、おおむね老齢厚生年金の4分の3の額と覚えておいていいでしょう。
A:平均標準報酬月額×7.125/1,000×平成15年3月までの加入期間の月数
B:平均標準報酬額×5.4811,000×平成15年3月までの加入期間の月数
広く知られている「遺族年金は亡夫の年金の4分3」の勘違い
――遺族年金は亡くなった夫の年金の4分の3
そんな話が広く知られていますが、ここで気を付けたいのが、あくまでも老齢厚生年金の4分の3であるということ。これを併給の老齢基礎年金を足した金額の4分の3と勘違いしている人は多いよう。
亡くなった夫は年金月17万円。「遺族年金は12万円強になるのね」と思っていたら、実際は5万円近くも少ないわけですから、ビックリするはず。夫を亡くしたあとの生活にも影響を与える勘違いなので、しっかりと覚えておきたいものです。
神田良子さん(仮名・69歳)。1年前、3つ上の夫は心筋梗塞で急死。複雑な年金ルールに翻弄されたひとりです。