キーワードは「最低限」――コストの抑制がカギ
前回紹介したマンモス物件の再生計画について詳しく見ていきましょう。
マンモス物件をリフォームするにあたって、私がまず念頭に置いたのは「最低限」というキーワードです。それまでの経験上、リフォームをやり始めるとキリがないことは分かっていました。やりようによってはいくらでもやれることはあるし、やればやるほどコストがかかるのです。
しかし、それでは十分なキャッシュフローは生み出せません。ですから、なるべくコストをかけないことを前提にした「再生しない再生」をテーマにしたのです。
それに、再生物件において本当に重要なのはリフォームではありません。客付ができるのか、家賃を上げられるのか、上げられるのであれば、どれくらいお金をかけるといくら家賃が上げられるのかが、投資家にとってはもっとも重要なポイントになります。これらのポイントをクリアできる「最低限」のリフォームにしなくてはいけないのです。
ヒアリングの結果、「大規模修繕」は不要という結論に
「最低限」のリフォーム計画を立てるにあたり、私は徹底的なヒアリングを行いました。その結果、候補に挙がったのは3つのプランです。
1.原状回復レベル(家賃の限界:3.2万円)
2.設備面の改善(家賃の限界:3.9万円)
3.間取りを変更し、かつ設備面にもお金をかける(家賃の限界:4.1万円)
再生物件というと「大規模修繕」を真っ先に考える方も多いでしょう。私も最初は意識したのですが、ヒアリングの結果、客付けにはまったく影響がないことが分かりました。そのこともあり、「最低限」のリフォーム、つまり「再生しない再生」で十分だという結論に至ったのです。
外壁塗装、屋上防水、エントランスの整備、物件名の変更、看板の設置など、満室経営に必須とされていることは数多くあります。しかし、私はそれらのことには一切手を加えませんでした。セオリー通りではなくとも、再生物件の満室経営は可能なのです。大規模修繕のコスト面から再生物件を敬遠している方も、あきらめずにチャレンジしていただきたいと思います。