母の死から2年後…ジロウさんに「1本の電話」が
その後、サチエさんが逝去。帰国したイチロウさんが相続税申告のために財産目録を作成していると、その遺産の減り具合に疑問を抱きました。「なんでこんなに減ってるんだ……ジロウ、なにか知らないか?」しかし、イチロウさんがいくら問い詰めても、ジロウさんは「母親の介護で使った」の一点張りです。
怪しいと思ったイチロウさんでしたが、長い間海外におり、母親の面倒をジロウさんに任せっきりにしていた後ろめたさもあり、それ以上責めることはしませんでした。ジロウさんは、「よかった……逃げ切った!」とひと安心です。しかし……。
それから2年ほど経ったある日のこと。ジロウさんのもとに、税務署から1本の電話がありました。出てみると、「サチエさんの相続税調査に伺いたいのですが」とのこと。
平然を装って対応しましたが、「私の使い込みが税務署にバレてしまったのだろうか」と内心冷や汗が止まりません。不安を感じながら、いよいよ調査当日になりました。
和やかな雰囲気が一転…ジロウさんに課された多額の追徴税額
調査官は2名でやってきました。緊張していたジロウさんでしたが、予想に反して和やかな雑談から始まったため、緊張がほどけていきます。
しかし、ジロウさんに笑顔がみえたところで、徐々に相続税申告についての質問が始まりました。
調査官「お父さまが亡くなった際に相続税の申告書を提出されていますが、そのときからだいぶ財産が減っているようですね。なにに使われたのでしょうか?」
ジロウさん「母の体調が悪くなったものですから、ずっと私が面倒をみてきました。なので、その介護費用ですね。3年前ぐらいから認知症になり、そのあと施設に入れることになったので、そこでの費用もだいぶかさんでしまって」
調査官「そうでしたか。しかしそれにしても、あまりにも減りすぎている印象を受けますね……。お母さまの預金通帳の管理はどなたがされていたのですか?」
ジロウさん「母が銀行に行けないものですから、認知症になる少し前から、ずっと私が行っていました」
調査官「なるほど。さきほど3年ほど前にお母さまが認知症にかかり施設に入ったと伺いましたが、そのころから頻繁にお金の引き出しがあるようですね。お母さまの施設費用や生活費などを鑑みても、約6~7,000万円ほど多く引き出されているようです。ジロウさんはいったい、こんな大金をなにに使われたのですか?」
ジロウさん「それは……」
口ごもるしかないジロウさん。和やかな雰囲気が一転、母親の預金をギャンブルに使い込んだことがバレたジロウさんは、6,000万円の申告漏れが指摘されたほか、加算税・延滞税などのペナルティを含めると約2,500万円の追徴課税を支払うはめになりました。
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