(※写真はイメージです/PIXTA)

相続人の方の多くは「相続で子供たちに迷惑をかけたくない」と考えるでしょう。そのためには、自身の憶測ではなく、家族全員が相続についてどう考えているのかを明確に知る必要があります。相続人の方はその上で、自身の考えを家族の想いと擦り合わせていくと、円満な相続になる確率が非常に高まります。本稿は、一般社団法人相続FP協会、相続FPの学校・代表理事の山本祐一氏が、司法書士の岡本先生(仮名)にインタビューをした際に話された、吉田さん(仮名:85歳)の相続事例をもとに解説します。

長男も次男も「平等にしたい」想いは同じ。だが…

そして後日、私は再び吉田さんの施設に伺いました。少し重苦しい雰囲気の中、吉田さん以外に二組のご夫婦が同じ部屋に集まっていました。

 

話を聞くと、長男次男それぞれの共通点として「平等にしたい」という想いを抱いていることがわかりました。しかし、想いは共通していても、長男と次男が思う「平等」の内容は全く異なるものでした。

 

特に次男は、吉田さんが事前に感じていたように

 

「兄さん夫婦は母さんの面倒を見てくれたとはいえ、今は親父も施設に入ったから家をもらったようなものだと思うんですよね」

 

と、長男が実家に住んでいることでもやもやされているところがあるようでした。

 

吉田さんが所有している不動産は、自宅と収益不動産の二つです。収益不動産のみを信託会社に信託するのか。収益不動産を家族信託する場合には、賃貸経営は誰が行うのか。そして何より大切なのは、長男次男それぞれの折り合いどころはどこなのか。

 

複数回お会いして、誰が何を相続したらどんな金銭的な利益や負担があるのか、ということを皆さんと想定しながら擦り合わせをしていきました。

 

梅雨も明け、真夏日が続く頃、再び吉田さんから連絡が入り、私は数ヵ月ぶりに吉田さんの住む施設へ足を運びました。部屋に入ると、吉田さんと長男・次男夫婦が集まっていましたが、前回とは異なりその場にいる全員が明るい表情で私を迎えてくれました。

 

「おかげさまであれからじっくり全員で話し合いをして、家族信託という選択を取ることにしました」(吉田さん)

 

吉田さんには、不動産は自宅と収益不動産の二つしかありませんが、自宅には今、長男家族が住んでいます。しかし、自宅も老朽化が進んでいるため、リフォームが必要です。

 

この場合、自宅は吉田さんの名義の建物となっているので、長男のお金でリフォームをすると、長男から吉田さんへリフォーム工事代金の贈与となってしまいます。そのため、吉田さんのお金でリフォームをすることで贈与にはならず、同時に吉田さんの資産も減ることになるので、相続対策にもなりました。

 

収益不動産については、家族信託で次男が管理をすることとなり、次男が賃貸経営を行い、家賃収入を収益不動産の各支払いに充てられるようにしました。吉田さんの相続時には、管理している収益不動産とお金は次男に承継させることにしました。

 

自宅に関しては遺言書を作成し、長男に相続させることにしました。また、吉田さんの面倒を見るための金銭を、長男が受託者として管理する信託も設けました。

 

必要な遺言書や信託関連の書類等の作成が一通り終わり、秋になる前には無事に吉田さんの約1億8,000万円の生前対策・相続対策が終わりました。

子が親に直接言い難いことは多い

あれから吉田さんから何も連絡はないですが、便りのない知らせはいい便りとも言います。

 

今回、改めて思うことは相続に関することは当事者以外の第三者が入ることで円滑に進むケースが多いということです。

 

吉田さんの場合、遺言書を書いていただきましたが、子が親に直接「遺言書を書いて」とは言い難いかと思います。私たちのような第三者が入ることにより、やってほしいことや進めてほしい話などをお願いすることが可能です。

 

また、今回のケースでは、吉田さん、お子様、その奥様方で想いを共有したことで、ご兄弟の「平等」を実現することができ、結果、吉田さん本人だけでなく、お子様やその奥様方にも安心していただくことができたのだと思います。

 

もし今、今後のことを考え親が元気なうちに相続について話し合いたいという方は、第三者の力を借りながら早めに済ませておくことをお勧めします。

 

 

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