再逮捕・追送検・追起訴・拘留…ニュースで目にするが実はよく知らない「逮捕」にまつわるエトセトラ【事件に詳しい元新聞記者が解説】

再逮捕・追送検・追起訴・拘留…ニュースで目にするが実はよく知らない「逮捕」にまつわるエトセトラ【事件に詳しい元新聞記者が解説】

容疑者を逮捕した、さらには再逮捕、追送検、追起訴…といった内容のニュースが毎日のように私たちの耳に入ってきますが、それぞれなぜ行われるのか、どう違うのかをはっきり理解している人は少ないのではないでしょうか。逮捕などをされた後に刑事施設に収監される「拘留」についても同様でしょう。そこで本記事では、『三度のメシより事件が好きな元新聞記者が教える 事件報道の裏側』(東洋経済新報社)より、著者の三枝玄太郎氏がこれらの情報について解説します。

長期勾留をめぐる〝大失態〞

 

さて、22日にせよ、44日にせよそれ以上にせよ、勾留期間中に起訴が決まったとしましょう。あとは裁判所で決着を待つだけですから、それ以上勾留される必要は本来ないはずです。それなのに多くの事件では、起訴されたあとも勾留が続くことがあります。

 

もしそうなっても、通常は被告人や弁護人などの保釈請求によって、一時的に釈放されます。ただし例外があり、殺人事件のような重大事件や、余罪が多数ある窃盗事件などは、ほとんど保釈は認められません。逮捕と同様に証拠隠滅のおそれがある場合も認められません。

 

2002年6月に東京地検特捜部にあっせん収賄容疑で逮捕された鈴木宗男衆院議員の身柄拘束は、437日という異例の長期間に及びました。

 

このときは、「人質司法」「国策捜査」との批判が起こり、保釈を認めない裁判所や勾留を続ける検察庁を弁護側が激しく批判しました。結局、鈴木氏は懲役2年、追徴金1,100万円の実刑判決が確定しましたが、この数年後に決定的な失態が起きてしまいます。

 

2009年の村木事件です。大阪地検特捜部が村木厚子・厚生労働省雇用均等・児童家庭局長(当時)を逮捕した郵便不正事件で、ご記憶の方も多いでしょう。

 

事件は村木氏が社会・援護局障害保健福祉部企画課長時に、自称障害者団体に偽の障害者団体証明書を発行し、不正に郵便料金を安く発送させたとして逮捕されたというものです。虚偽公文書作成・同行使容疑というそれほど重い罪ではなかったにもかかわらず、身柄拘束は164日に及び、起訴後も勾留が続きました。

 

逮捕状の請求のときと同じで、検察での勾留延長には裁判所の許可が必要です。このとき、場合によっては、被疑者は「勾留理由開示請求」という伝家の宝刀を抜けることもあります。公開の法廷で、自分が勾留されている正当な理由は何かを裁判官から説明してもらう制度です。

 

あまりありませんが、過激派のメンバーが捕まったりすると開かれることがあります。傍聴したことがありますが、弁護人「この逮捕は不当です。被告を釈放しなさい」、裁判官「裁判所は勾留理由を開示する場所ですから、そういう意見を言われても困ります」といった応酬が延々と続き、なかなかカオスな空間でした。

 

いずれにせよ、犯罪の捜査、解決には、裁判所が関与することによって、警察や検察が暴走しないようなしくみを作っているのです。

 

それでも、村木事件のようなことがあるのが現実です。村木事件は、大阪地検検事が証拠を改竄したことが発覚し、当時の特捜部長らが逮捕されるなど、非常に大きな冤罪事件となりました。

 

 

三枝 玄太郎

 

※本記事は『三度のメシより事件が好きな元新聞記者が教える 事件報道の裏側』(東洋経済新報社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

 

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※本連載は、三枝 玄太郎氏の著書『三度のメシより事件が好きな元新聞記者が教える 事件報道の裏側』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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