「介護職不足」が深刻な日本
厚生労働省の「介護人材の処遇改善等」によると、介護サービス事業所における介護職員のうち、69.3%は「従業員が不足している」と回答しています。実際、令和4年度における全業種の有効求人倍率「1.16倍」に対して、介護職は「3.71倍」と、いかに介護職が不足しているかが読み取れます。
離職の理由としては、「職場の人間関係に問題があったため」が27.5%で最も多く、次いで「法人や施設・事業所の理念や運営の在り方に不満があったため」が22.8%、「他に良い仕事・職場があったため」19.0%、「収入が少なかったため」18.1%、「自分の将来の見込みが立たなかったため」15.0%です。
また収入に焦点をあてると、全産業の平均年収(役職者抜き)約433万円に対して、介護職は約351万円と、近年処遇が改善されてはいますが、いまだ約80万円の差があります。
介護職の深刻な人材不足について、現時点で抜本的な解決策はなく、子の状況は今後も続くことが見込まれます。高齢者の増加で需要があるにもかかわらず、人手不足が原因で休業、廃業に追い込まれる事業所も少なくないのです。
慢性的な人手不足の状態でサービスを提供している介護施設もありますが、介護の質が低下して事故が増えたり、職員の負担が増えることで離職率が上がったりと、悪循環に陥ってしまう場合が大半です。
このように、施設によってアタリ・ハズレの激しい介護施設(老人ホーム)。大切な家族のためにも「失敗しない施設選びのポイント」をおさえておきましょう。
失敗しない施設選びのポイント
介護施設を選ぶ際、最低でも次の4つのポイントはみておきましょう。
■ICTの導入実績
■職員の勤続年数
■資格を保有している職員の数
■設備だけで判断しない
まず、離職が多い施設には何かしらの問題があることが多いです。離職の理由には「人手不足による残業の増加」「余裕がなく職場の人間関係が悪化」「研修の不足」などがあります。
一方、ICT(情報通信技術)の導入による業務の効率化や積極的な採用活動により人材の確保ができており、充実した研修と具体的なキャリアパスの設定で優秀な介護職を育てている施設もあるため、入居を検討している施設の設備や業務環境についてもチェックしてみると良いかもしれません。
また、重要事項説明書の『職員欄』で、長く勤めている職員が多いか、入れ替わりが多くないか、有資格者が多いかなど確認をしましょう。
勤続年数は長い職員が多ければ職場が安定していると受け取れます。もっとも、Aさんが入居した老人ホームのように、オープンしたばかりの施設の場合、職員の勤続年数は短くなります。その際は、資格保有者の人数が判断基準の1つになります。
介護サービス施設・事業所に実際に配置されている介護職員のうち、介護福祉士の割合は全体で約54.7%となっています。重要事項説明書などで在籍の職員の勤続年数と資格保有者を確認する際の参考にしてみてはいかがでしょうか。
そのほか、事例のなかではBさんが施設の設備に魅力を感じていましたが、介護はあくまでも人が中心です。そのため、施設に勤めている職員によって大きく左右されます。設備よりも職員の入居者に対する接し方に違和感がないか、しっかり確認しておくことが大切です。
施設の入退去は、本人だけでなくその家族にとっても大きな負担となります。入居を決断する前にしっかりと情報収集を行い、上記①~④の観点から複数の施設を比較したうえで、適切な施設を選びましょう。
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