87歳のAさん…息子の説得で「老人ホーム暮らし」を決断
現在87歳のAさん(女性)は元小学校教員で、その時代には珍しく、校長まで勤めた人物です。退職金は2,500万円、年金は23万円と、金銭的な不安はほとんどありません。数年前に夫を亡くしてからは、広い戸建てにひとりで暮らしていました。
そんなAさんには、同じ県内に暮らすひとり息子のBさん(55歳)がいます。Bさんは定期的にAさんの様子を見に実家へ帰るなど、高齢の母親を気にかけていました。
特に、父親が亡くなって以降、Bさんは「こんな広い家にひとりで暮らすのも大変だろう。専門の職員がいる施設に入ったら?」と、母親であるAさんに介護施設への入居を勧めていました。
「まだまだ大丈夫。あんたには迷惑かけないよ」と強がっていたAさんでしたが、あるとき鍋を空焚きし、ボヤ騒ぎを起こしてしまいました。
「やっぱり危ないよ。家事は大変だから施設へ入って俺を安心させてくれ」と長男が伝えると、Aさんはしぶしぶ納得。施設への入居を決断しました。
「老人ホームは介護が必要な人しか入れない」と勝手に思い込んでいたAさんですが、長男いわく、いまはさまざまな種類の施設があるといいます。そして長男からおすすめされたのが、県庁所在地に新しくオープンした綺麗な有料老人ホームでした。
AさんとBさんが施設見学に行くと、職員たちは笑顔で迎えてくれました。設備は新しく充実しているほか、オープンしたばかりということもあり、入居者の数もそこまで多くなく、穏やかでゆとりのある良い雰囲気でした
Aさんは早速ほかの入居者と談笑するなど、すっかりこの施設を気に入っている様子。一緒に見学していたBさんも「ここなら職員の雰囲気も良いし、建物もきれいだから大丈夫だろう。なにより家から近いのがありがたい」と、ひと安心でした。しかし……。
Aさんが老人ホームに入居して約1年後、Bさんのもとに「助けて!」と電話がありました。 なにごとかと思い理由を尋ねると、Aさんいわく「男が部屋に入ってくる!」とのこと。いったいどういうことなのか、Bさんにはわかりません。
「まさか認知症になったのか? この前会ったときは元気そうだったが……」Bさんは不安に思いながら急いで施設に向かいました。