▲5%ルール投資法の投資パフォーマンスを分析
私が提案する「▲5%ルール投資法」は、株価指数の中で世界一重要と考えられる「S&P500」が週間ベース(前週の金曜日の終値~今週の金曜日の終値)で5%以上下落したら買うという、とてもシンプルな投資手法です。
※下記記事で「▲5%ルール投資法」の概要を解説しています。
『S&P500に投資する超シンプルな「▲5%ルール投資法」が「積み立て投資」との合わせ技で〈利益の最大化〉を狙える理由【投資アドバイザーが解説】』
1984年から2030年の40年間、▲5%ルール投資法を実行した場合の勝率を検証したところ、シグナルが点灯したときに購入し26週間後(半年後)まで持ち続けていたときの勝率は76.9%と非常に高いものとなりました。
勝率が高い理由は極めてシンプルで、安い時に買えているからです。安い時に買えば儲かるというのは、だれでも感覚的にわかっていることです。だったらそれを実行すればいいじゃないかと思うわけですが、それはとても難しいことなのです。
[図表1]は、先の検証で用いたeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の資金の流出入額と、S&P500の値動きを合わせたグラフです。棒グラフはeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の資産の純増額で、高いほどたくさん買われたことを示します。折れ線グラフはS&P500の基準価額です。
2020年3月のコロナショックの暴落時は、すかさず買いを入れた賢い投資家が少しいることがわかりますが、水準としてはごく低いものです。コロナショック後にグングン株価が上がり出し、その上昇が1年半以上続いた21年の11月と12月に、純増額がピークに達しています。
グラフだけを見れば、もっと早く投資していればいいのに、と思うでしょう。たとえコロナショックの暴落時には買えなかったとしても、その後の株価は上昇に転じているのですから、その時点でなるべく早く投資すればいいのです。
しかし実際は、上昇に転じたばかりの買い時といえる時期の純増額はほぼ横ばいです。上昇が1年近く続いたころからようやく増え始め、上昇相場が1年半続いてかなり高くなってしまった時期に投資家の買いがピークに達しています。
これは、暴落から上昇に転じたばかりのころは、まだ暴落の記憶がまざまざと残っていて、上昇トレンドに確信が持てず、買うのは怖いと感じる投資家が多いことを示しています。
一本調子にグングン上昇する相場が1年以上続くとようやく、「株は上がるものだ」「この上昇に乗らなければ損だ」と考える投資家が増えてきます。相当株価が高くなってしまったころにようやく安心感が広がり、買いが殺到するわけです。
皮肉なことに、投資家が総じて楽観的になったこのタイミングが、株価のピークになっています。純増額が天井圏に達した直後に株価の上昇がストップし、1年以上にわたる横ばい相場に突入しているのがわかります。
このピーク時である21年11月から22年1月までの間に買ってしまった人は、資産が含み損になったり含み益になったりという状態が1年以上続くことになります。
23年3月にようやく、長かった横ばい相場が終わり、株価は上昇を始めます。やっとここで投資チャンスがやってきたように見えますが、ファンドの流出入額はこのタイミングでむしろ大きく落ち込んでいるのがわかります。
再度の株価上昇がスタートした絶好の投資タイミングで、実際に投資できている人は極めて少ないのです。
これは、含み損が出たり解消したりする横ばい相場が1年も続いたことで、イライラさせられた投資家がうんざりしてしまい、買うどころか含み損が消えた段階で手放してしまったからではないでしょうか。
やっと良い投資タイミングが訪れて「これから」という時に、多くの投資家は金融商品を売ったり、買うのをやめたりしてしまうのです。
そして、その後は半年ほど急ピッチの上昇が続き、株価がすっかり高くなってしまってから、再度純増額が増えるという皮肉な状況が起こっていることもわかります。