「1ドル160円」のなにが悪い?…メディアが巻き起こす“悪い円安論”は見当違い。むしろ「日本大復興」の契機といえるワケ【専門家が解説】

「1ドル160円」のなにが悪い?…メディアが巻き起こす“悪い円安論”は見当違い。むしろ「日本大復興」の契機といえるワケ【専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

今年の4月29日に1990年以来34年ぶりとなる「1ドル160円」をつけた米ドル円相場。そのようななか、日本ではメディアによる“悪い円安論”が巻き起こっているが、これはまったくの見当違いで、むしろこの円安は「日本大復興」の契機となり得ると、株式会社武者リサーチ代表の武者陵司氏は語る。その根拠とはいったいなんなのか、さまざまなデータを紐解きながら詳しくみていこう。

円安が「日本大復興」の契機と考えられるワケとは

為替は将来の経済を決定する最も重要な手段である。日本の産業復興を切望する米国が、円安を誘導しているのだ。

 

韓国が2008年から2013年の著しいウォン安の過程で飛躍的に競争力を強め日本のハイテク企業をなぎ倒したが、円安の定着は日本の劇的再台頭を準備するだろう。

 

この軌道上には製造業立国として、サービス(観光)立国としての日本再登場が見えている。円安は世界の需要を日本に集中させることで過去最高水準の設備投資の活況を引き起こしている。

 

円の底値を探る為替市場…“無駄な抵抗”はNG

また高収益と内外賃金格差により、企業の賃上げモチベーションを高めデフレ脱却を確かにしつつある。それにより長期的には日本の強い円が復活する。日本は今の円安の僥倖を享受するべきであり、間違っても円高誘導等、無駄な抵抗をするべきではない。

 

市場は投機を繰り返して落ち着きどころを探っているのではないかと考えられる。まず地政学の理由により長期円安との相場観が形成された。投機を繰り返して円の底値を探っていると思われる。

「円売り投機」も終盤か…日本の持つ海外資産の影響

日銀、政府は円売り投機に慌てふためく必要はない。

 

日本はトルコなどの通貨脆弱国とは異なり、世界最大の3.1兆ドルの対外純資国、米国国債を1.2兆ドル保有する世界最大の対米資産保有国である。この巨額の海外資産がもたらす為替益は甚大、官民合わせれば100兆円は優に上回るだろう。

 

投機者も日本のこの懐の深さを知っている。円売り投機は終盤であるかもしれない。

 

出所:米財務省、ブルームバーグ、武者リサーチ/出所:IMF、武者リサーチ
[図表4]世界最大、日本の米国国債保有/[図表5]ダントツの日本の対外純資産 出所:米財務省、ブルームバーグ、武者リサーチ/出所:IMF、武者リサーチ

 

出所:日銀、東証、財務省、労働省、不動産研究所、武者リサーチ
[図表6]力強い回復、新たな成長軌道が見えた日本経済(1984年=100) 出所:日銀、東証、財務省、労働省、不動産研究所、武者リサーチ

 

出所:OECD、武者リサーチ
[図表7]懲罰的円高から恩典的円安へ、円安が日本大復活の原動力 出所:OECD、武者リサーチ

 

出所:労働省、内閣府、武者リサーチ 2024年予想は武者リサーチ
[図表8]円高下コスト削減のしわ寄せを受けた賃金、今円安下で大幅上昇へ 出所:労働省、内閣府、武者リサーチ
2024年予想は武者リサーチ

 

 

武者 陵司
株式会社武者リサーチ
代表
 

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※本記事は、武者リサーチが2024年5月14日に公開したレポートを転載したものです。
※本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。

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