3.金融政策
<現状>
●FRBは、4月30日~5月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利(フェデラルファンド(FF)金利5.25~5.50%)を6会合連続で据え置き、6月からの量的引き締め(QT)のペース減速を決めました。パウエル議長は会見で、利下げの開始が遅くなる可能性を示唆しました。
●ECBは4月の理事会で、5会合連続で政策金利(預金ファシリティ金利4.00%など)の据え置きを決めました。声明文では、インフレが持続的に収まるとの確信を得られれば「金融政策の水準の引き下げが適切になる」との文言を盛り込み、今後の利下げ転換を示唆しました。
●日銀は4月の金融政策決定会合で、現状の政策金利(無担保コール翌日物金利0.0~0.1%)を維持しました。公表した「経済・物価情勢の展望」では、消費者物価の前年度比上昇率見通しを24年度、25年度とも前回から引き上げ、26年度は1.9%としました。
<見通し>
●FRBは、粘着質のインフレ動向をにらみながら、当面現状の政策金利を維持するとみられます。先行きは、インフレの鈍化に伴う実質金利上昇を回避するため、24年9月に利下げを開始し、年内の利下げ回数(1回=0.25%)は2回になると想定しています。
●ECBは、欧州景気が停滞しているなか、インフレ圧力が減速していることから、5月に発表されるデータを確認し、次回6月の会合で利下げに踏み切ると予想します。ECBは24年6月に利下げに転じた後、四半期ごとに0.25%の利下げを行うと想定しています。
●日銀は、景気が力強さを欠いていることから、3月に大幅に修正した金融政策を当面維持するとみられます。しかし、円安圧力が続くなか、物価見通しを引き上げたことから、追加利上げを実施するとみています。政策金利は、24年10月に0.25%、25年4月に0.50%への引き上げを想定しています。
4.債券
<現状>
●米国の10年国債利回り(長期金利)は、3月の雇用統計やCPIが市場予想を上回るなど、インフレの根強さを示す経済指標が相次ぎ、パウエル議長がタカ派的な発言をしたことを受けて、FRBの利下げ観測が大きく後退したため、大幅に上昇しました。
●ドイツの長期金利は、ECBが次回6月の利下げ転換の可能性を示唆したものの、米長期金利に連れて上昇しました。
●日本の長期金利は、日銀が金融政策を維持したものの、米長期金利の上昇と円安が進行するなか、追加利上げの観測から上昇しました。
●米国の投資適格社債については、社債スプレッド(国債と社債の利回り差)がやや縮小しました。
<見通し>
●米国の長期金利は、当面もみ合いを続けた後、緩やかに低下すると想定しています。堅調な雇用情勢やインフレの高止まりを受けて、利下げ開始時期の先送りが警戒されるものの、年後半にはFRBによる利下げが実施されると見込んでおり、徐々にレンジを切り下げていく展開を予想します。
●欧州の長期金利は、景気が停滞するなか、ECBが6月にも利下げに転じるとみられるため、緩やかに低下する展開を予想します。
●日本の長期金利は、景気が緩やかに回復するなか、円安圧力が続いていることから、日銀の追加利上げが警戒され、やや上昇すると予想します。