新たな人材を採用するならば「面接」を避けては通れません。東京エグゼクティブ・サーチの代表取締役社長・福留拓人氏曰く、過熱する採用市場は「二極化」が進んでいるようです。そこで本記事では、最新の「面接」の実情と優秀な人材を採用するコツについて解説します。
「オンライン面接だけで選考終了」or「面接10回以上」…二極化する採用現場の最新事情【人材紹介のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「理念採用」で企業が注意すべきこと

面接回数が多くなる採用には特徴があります。1つめは、その会社のなかで重要なポジションの採用であること。2つめは、理念採用の傾向が強いことです。

 

理念採用では、その企業の文化や行動指針を、面接などの機会に伝達・学習させることを重視します。もちろん能力や実績も重視しているのですが、それに加えて、理念に共鳴しているか、企業の考え方に合っている人物かどうかを重視する採用が行われます。

 

それから、最近は「ワークサンプル」といって入社後の行動の仮説等を検討するようになりました。ケーススタディを課して、面接だけでは推し量れない潜在能力を選考段階で知ることを重視する企業も現れるようになりました。

 

私はそうした傾向について否定しません。企業ごとに理念や文化があり、それに合う、合わないという問題は現実にあるからです。

 

売り手市場が過熱しているときは、候補者にある程度の忖度をするのは無理のないことですが、その一方で忖度や妥協をせず自社に合う人材を厳しく吟味するということは、否定されるべきことではありません。

 

ただし、次のような点には注意が必要であると思われます。売り手市場の場合はいろいろな対応において決定のスピード感が大事になります。なぜなら、多くの企業がスピードアップをしようと努めているからです。

 

あせる、あわてるという必要はありませんが、あまりにも採用プロセスが長くなると魅力的な企業であっても選ばれなくなってしまう可能性が高くなります。「過ぎたるは及ばざるがごとし」で、行き過ぎには充分な注意が必要でしょう。

 

また、理念採用および役員をはじめとした中核メンバーとの相性を異常に重視し、多くの会食を繰り返す企業もあります。こういう会社は、理念採用の基準を言語化して自社で共有できているかを再確認すべきです。

 

共有できていないと理念が採用担当者の主観になってしまい、慎重に採用しようとするメリットを自分たちで放棄していることがあるからです。

 

そして、すこし耳の痛い表現かもしれませんが、多くの面接回数を求職者に課す企業は自社を過大評価していないか、ここを一番冷静に見るべきではないでしょうか。