企業が春闘で「賃上げアップ」を受け入れた背景
今年の春闘では、3月にベースアップの集中回答日がありました。報道でご覧になった方も多いと思いますが、大企業を中心に、驚くほどの賃金上昇を企業側が飲んだことで注目されました。政府からの賃上げ要請に対応していくということが大前提にはなっていますが、企業側の本音としては、もうひとつ要因があると思われます。
それは、ここで賃上げを渋って従業員の退職等を引き起こしてしまうと、その後の人材の補充が難しくなるということです。私は、「政府からの要請」と「人材補充の難しさ」、この2点が賃上げ要求を飲まざるを得なかった大きな理由だと考えています。
調べてみると、企業における直近の一人当たり採用コストは統計よりも急上昇しているようです。
採用活動にはいろいろな方法があり、求人広告を打つ公募型もあれば、エージェントを介しての紹介型もあります。また最近普及してきたリファーラル採用(社員の紹介や推薦)などもあります。
私どものような人材紹介会社を経由した採用については、直近では業種を問わず一人当たりの紹介料率が初年度年収の40%を超えることもめずらしくなくなってきました。年収の40%というと非常に高額になるわけで、数年前に30~35%平均だったものが35~40%平均、すなわち5%上昇したということです。
これは大変な上昇といって差し支えないと思います。
需給の理屈ですが、売手市場が過熱して人が採れなくなれば、他社に先んじて紹介料率を引き上げる動きにつながります。すると他社もそれに追随せざるを得なくなるわけですから、この状況はいかに求人市場が過熱しているかということを物語っています。
こういった場合に、一部の大企業は別にして、世の中の大半は中小企業ですから「中小企業にはこういった傾向は見受けられない」というような論調も見受けられます。
しかし、採用コストについては、業種、業態を問わず、おおむね一斉に上がりはじめているといって過言ではないでしょう。
これまでのコラムでもたびたび触れてきているように、残念ながら少子高齢社会という背景は短期間で解決するような問題ではありません。
そして外国人の登用についても、言語の問題もさることながら異文化を社内に融合させる難しさがあり、日本ではあまり積極的ではありません。