何度も何度もやり直しをさせられている
類似のケース
●納期が延びて案件が終了しない
●納品完了後に修正を求められている
相談事例
いつまで修正対応しないといけないの!?
イラストレーターのXさんは、普段からSNSで、クマのイラストを制作して発信していました。ある日、衣料品メーカーY社から「Y社が新商品として企画しているTシャツにワンポイントであしらうため、クマのイラスト制作を依頼したい」と問い合わせがありました。
Y社からの問い合わせには「普段からSNSを拝見しており、Xさんのイラストのファンで、ぜひXさんにお願いしたいと思いご連絡しました。性別・年齢問わず着用できるようなTシャツにしたいので、かわいらしいけどもかわいらしすぎないイラストの制作をお願いできればと思っています」とありました。Xさんは、自分のファンということもあり、受注することとしました。
XさんとY社は、発注書のやりとりを行い、「①クマのイラスト制作1点」「②制作費用5万円(消費税別)」「③納期は別途Y社が指示した日時」という条件で合意しました。
2週間後、Xさんはラフ案を3案提出しました。Y社からは、「2番目の案がかわいらしくていい。その案をベースに制作してほしい」と連絡がありました。2週間後、Xさんは2番目の案をベースに納品物を制作し、提出しました。しかし、Y社から「社内でかわいすぎるという意見が出たので、もう少し修正をお願いしたい」と連絡がありました。
Xさんは、この連絡を受けて、修正を行い再度提出しました。すると、Y社から「社長に報告したところ、1番目の案の方がよかったという話になった。1番目の案で改めて制作してもらえないか?」と連絡がありました。
「2番目の案で進めることになり、一度修正も行ったあとに、今さら別の案を指定するなんて……」と思いましたが、「納期はY社が指定する日時となっており、Y社が納品として認めない以上は、要望に応じ続けなければいけないのかな?」とXさんは迷っています。
対応策
業務が完了した前提で交渉してみる
度重なる修正をさせられない、または、やり直しするとしても別途の有償対応とするためには、まず、受注した作業が完了しているかどうかがポイントとなります。
今回の件でいうと、受注した作業は「クマのイラスト制作1点」ですが、仮にクマのイラストを1点制作し納品が完了したといえるのであれば、受注した作業は完了しているため、それ以上の修正には応じる義務はないと判断できるでしょう。
ありえないでしょうが、例えば、間違ってネコのイラストを制作・納品していた場合などは受注した作業が完了しているとはいえません。
今回のケースでのポイントでは、「納期は別途Y社が指示した日時と定められているので、いつどの作業が完了したら納品が完了したといえるのか、納品までに何回修正に応じる必要があるのかなど、曖昧な状況である」という点です。
そのため、修正に応じる義務があると判断されるおそれがあります。もっとも、今回の件では、2番目の案で制作合意がなされ、さらに一度、修正依頼に応じて提出が完了している以上、この時点で納品が完了したと評価できる可能性もあります。
このように曖昧な状況なので、対応策としては、「受注した作業はひとまず完了し納品しているため、1番目の案への変更や、さらなる修正依頼をいただく場合には、別途、費用を頂戴します」と交渉してみることが1つ考えられるでしょう。