納品したのち、クライアントからの修正に対応しなければならないときもあるでしょう。とはいえ際限なく修正を求めてくるクライアントには、どう対応すべきなのでしょうか。本記事では、クリエイティブ分野に特化したリーガルサポートを行っている弁護士の宇根駿人氏・田島佑規氏による著書『クリエイター六法 受注から制作、納品までに潜むトラブル対策55』(翔泳社)から一部抜粋して、度重なる修正・無償でのやり直し等のトラブルを回避する契約上のコツについて解説します。
予防策
納品までの作業工程を合意しておく
度重なる修正を防ぐには、受注時に、納品までの作業工程をきちんと確認しておくことが重要です。例えば、いつデザイン案を提出するのか、デザイン案提出後から納品時まで何回修正を受け付けるのか、といった制作スケジュールをきちんと合意しておくのです。
また併せて、所定の修正回数を超えた場合には、別途費用が必要である旨を見積書などに記載しておくことも重要です([図表1])。
こうすることにより、合意した回数を超える修正は別途、有償対応となることが交渉しやすくなりますし、スケジュール通りに作業を行えば受注した作業が完了したということが客観的にわかりやすくなります。
なお、次回以降の受注を見据えて合意した回数以上の修正をサービスで行う分には問題ありませんが、その場合も「今回はサービスで無償で対応している」ということを伝えておくのがよいでしょう。
■ワンポイントアドバイス
Webサイトの制作の場合は、納品後に不具合が発覚することもあると思うので、納品後の修正対応(無償で修正対応する事象と有償対応とする事象の区別など)についても合意しておくのが特に望ましいでしょう。また、Webサイトの制作の場合は、納品後の運用・保守業務を誰が行うかについて、クライアントと齟齬が生じやすい事項でもあるので、その点もきちんと合意しておくことがおすすめです。
宇根 駿人
大道寺法律事務所
弁護士
田島 佑規
骨董通り法律事務所
弁護士
骨董通り法律事務所
弁護士
大阪府高槻市出身。洛南高等学校・神戸大学法学部卒、京都大学法科大学院修了(法務博士)。弁護士法人淀屋橋・山上合同を経て、現在、骨董通り法律事務所メンバー。
出版、映像、演劇・ライブイベント、音楽、デザイン等のクリエイティブ・エンタテインメント分野における法務サポートを中心的に行う。共著として『エンタテインメント法実務』(弘文堂)、『はじめての演劇』(日本演出家協会)、『10歳からの著作権』(Gakken)〔監修〕ほか。京都大学法科大学院・芸術文化観光専門職大学非常勤講師なども務める。
X(旧Twitter):@houjichazuki
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連載トラブルから身を守る! クリエイターなら知っておきたい『クリエイター六法』
大道寺法律事務所
弁護士
滋賀県長浜市出身。滋賀県立彦根東高等学校・京都大学法学部卒、京都大学法科大学院修了(法務博士)。共栄法律事務所を経て、ITベンチャー企業へ転職。その後、独立し現職(大道寺法律事務所パートナー)。
企業で社内弁護士として勤務した経験から、現在はインハウス法務の受託を主に取り扱う。主なクライアントとしては、音声配信プラットフォームを運営する企業やマンガ配信プラットフォームを運営する企業、プライバシーテックを取り扱う企業など。
X(旧Twitter):@hayato_une
note:https://note.com/unehayato
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