(※写真はイメージです/PIXTA)

契約書には「違約金」に関する定めが記載されていることも珍しくありません。しかし、違約金が事業活動や人生そのものに多大な影響を与えるくらい高額だった場合、交渉の余地はないのでしょうか。本記事では、クリエイティブ分野に特化したリーガルサポートを行っている弁護士の宇根駿人氏・田島佑規氏による著書『クリエイター六法 受注から制作、納品までに潜むトラブル対策55』(翔泳社)から一部抜粋して、高額な違約金によるリスクを避けるコツについて解説します。

違約金の記載がある契約書を提示された

類似のケース

●「納品が1日遅れるごとに〇万円支払う」という記載がある契約書を提示された

●「秘密保持義務に違反した場合、〇万円を支払う」という記載がある契約書を提示された

相談事例

違約金500万円ってこれ本当に支払わないといけないの!?

フリーランスの動画クリエイターであるXさんは、映像制作会社Y社の担当者Zさんから「Y社にて新たに業務をお願いできる動画クリエイターを探している。Xさんは実績も申し分なく、代表もXさんの作品を気に入っているので、ぜひY社のスタッフとして業務委託契約をお願いしたい。もし興味があるなら、まずは基本契約を締結したうえで、個別業務はその都度報酬などを定めた発注書に基づき行ってもらいたい」と依頼を受けました。

 

Xさんが「ぜひ前向きに検討したい」と返事をしたところ、Zさんから「映像制作業務委託基本契約書」が送られてきました。Xさんが早速内容を確認すると、気になる点が1点だけありました。

 

損害賠償に関する条文における「Xが本契約の定めに違反した場合、実際にY社に生じている損害の有無にかかわらず、その違約金として500万円を支払うものとする」という記載です。Xさんにとって500万円は大金で、到底払える額ではありません。

 

そもそもフリーランスや個人事業主に対して500万円の違約金は現実的なものではなく、そうしたことはY社もわかっているはずです。

 

このような記載が単に形式上のものなのか、または、一般的なものといえるのか、そして、その金額は妥当なのかなどについて、Xさんはよくわからず、どう対応してよいか悩んでいます。

対応策

受け入れ可能な内容かを確認し積極的に交渉する

違約金に関する定めについて、フリーランスや個人事業主に対する契約であっても記載されていること自体は必ずしも珍しいことではありません。

 

その違約金額があまりにも高額な場合には、裁判所において全部または一部が無効と判断される可能性はありますが、そうした例外的なケースを除き、基本的には有効となります。

 

つまり、違約金の定めがある契約書にサインをした以上は、契約に違反した場合には、その違約金額を支払わなければならない可能性があるということです。そのため、違約金に関する定めを契約前に確認することが重要です。

 

違約金に関する定めを確認するうえでは、「どういった場合に違約金を支払うことになるのか」「その際の金額はいくらになるのか」「違約金に加えて別途損害賠償金を支払わなければならない内容になっているか」などを検討するのが重要です。

 

「到底支払うことが難しい」「実際に支払うことになったら今後の事業運営に大きな影響が出る」など、自らでは受け入れられないと判断する場合には、「違約金の定めは受け入れることはできません」と相手にしっかり伝え、契約書からは削除してもらうことが重要です。

 

違約金条項の削除の交渉を行ううえでは、「仮に私に契約違反があって、損害を与えた場合にはその実損害については賠償をしますが、違約金として実損害以上に何か金銭を支払う可能性がある内容は受け入れることはできません」などと交渉するとよいでしょう。

 

なお、違約金の話以外でも、フリーランス(個人事業主)の方にとっては、何らかの契約違反があった場合にそれにより生じた実損害額を賠償すること自体が難しいことも多いでしょう。

 

特に、その損害額が高額になったような場合には、到底支払うことはできず、事業活動やそれを超えて自己破産の必要が生じるなど個人の人生にも大きな影響が生じかねません。

 

そのようなリスクを避けるためには、違約金の定めを削除してもらうのに加えて、損害賠償額の範囲を制限する規定を設けることが重要です。

 

例えば、制限方法としては、[図表1]のような記載パターンがあります。なお、リスクを想定しやすくおすすめなのは、①の損害賠償額の上限設定の方法です。

 

[図表1]賠償の範囲を制限する規定の例
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クリエイター六法 受注から制作、納品までに潜むトラブル対策55

クリエイター六法 受注から制作、納品までに潜むトラブル対策55

宇根駿人・田島佑規

翔泳社

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