遺言や家庭裁判所によって分割が禁止される場合とは?
Q.遺産の分割とは、どのようなことですか。
A.相続が開始すると、相続財産は共同相続人全員の共有となります。この共同所有状態を解消させて、相続財産を構成する個々の財産の帰属を決めるのが遺産の分割です。
遺産の分割は、遺言や家庭裁判所の審判によって分割が禁止された場合のほかは、いつでも分割を請求することができます(民法907条1項)。
遺産分割が禁止された場合とは、①被相続人が、遺言により、相続開始のときから5年間遺産の分割又は一部について分割を禁止する場合(民法908条)、②家庭裁判所が、特別の事情があると認め、期間を定めて遺産の全部又は一部の分割を禁止した場合(民法907条3項,家事事件手続法191条,別表第二の13の項)、③遺産共有者である相続人が、民法256条1項ただし書により、5年を超えない期間に限って分割禁止の契約をした場合等です。③の分割禁止の契約は5年を超えない期間であれば更新することができます(民法256条2項)。
相続開始の時に遡って生じる「遺産分割」の効力
遺産分割の方法には、遺言による指定分割、共同相続人による協議分割及び家庭裁判所の調停又は審判による分割があります。
すなわち,遺産分割は、①まず、被相続人が遺言により遺産分割の方法を指定した場合には,その指定に従って行われ(民法908条)、②遺言による指定がない場合には,共同相続人全員の協議により行われます(民法907条1項)。③協議が調わないとき又は協議をすることができないときは、家庭裁判所に遺産分割を請求することができます(同条2項)。
遺産分割の効力は、相続開始の時に遡って生じます(民法909条)。すなわち、分割によって取得した財産は、相続開始の時から、直接被相続人から承継したものと扱われます。
相続人が遺産分割により不動産を取得した場合、共同相続の登記を経由することなく、被相続人から当該相続人に直接に所有権移転登記をすることができるかという問題があります。登記実務の取扱いでは、数人のために相続が開始した後、各相続人において遺産分割の合意があったときは、共同遺産相続の登記をすることなく、直ちに分割後における各単独所有名義の遺産相続登記をすることができるとしています(昭和19・10・19民事甲692号回答)。