(※写真はイメージです/PIXTA)

チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)が解説します。

 

●経常黒字の中身は2000年代半ば以降、貿易収支の黒字から第一次所得収支の黒字に変化。

●第一次所得収支の黒字は一般に再投資され円高要因になりにくい、最近はデジタル赤字に注目。

●デジタル赤字は円売り要因、旅行収支の黒字は円買い要因、円の需給ではサービス収支も重要。

経常黒字の中身は2000年代半ば以降、貿易収支の黒字から第一次所得収支の黒字に変化

ドル円は年初からドル高・円安が進み、足元で1ドル=155円に近づきつつあります。背景には、景気の底堅さを背景とする米利下げ期待の後退(ドル高要因)や、日銀が当面緩和的な金融環境を継続するとの見方(円安要因)などがあると思われます。ドル円は目先、日米の金融政策や金利差の動きに、敏感に反応する展開が予想されますが、今回のレポートでは、やや中期的な観点から、日本の経常収支の構造変化と円の需給について考えます。

 

図表1は、1996年から2023年までの期間における、年間の経常収支とその構成項目の金額推移を示したものです。経常収支は1996年以降、黒字が続いていますが、構成項目をみると、2000年代前半までは貿易収支の黒字が多くを占めていたことが分かります。しかしながら、2000年代半ば以降は、貿易収支に代わって第一次所得収支の黒字が、経常収支の黒字をほぼ構成するようになりました。

 

[図表1]経常収支とその構成項目

第一次所得収支の黒字は一般に再投資され円高要因になりにくい、最近はデジタル赤字に注目

貿易収支の黒字が減少した要因として、海外生産比率の上昇による輸出の減少、原油価格の上昇による輸入の増加などが考えられます。なお、第一次所得収支とは、対外金融債権・債務から生じる利子・配当金などの収支状況です。第一次所得収支を構成する直接投資収支と証券投資収支は1996年以降、増加傾向にあるため、過去に行った対外直接投資や対外証券投資のリターンが積み上がり、第一次所得収支の黒字増加につながったと推測されます。

 

一般に、貿易収支の黒字は輸出超過であるため、為替市場で外貨売り・円買い取引が発生し、円高要因と考えられる一方、第一次所得収支の黒字は対外直接投資や対外証券投資のリターンであるため、海外で再投資されるケースが多く、円高要因にはなりにくいと考えられます。また、最近では、サービス収支のうち、海外企業のウェブ広告やクラウドなどデジタルサービスに支払う、「デジタル赤字」の拡大が注目されています。

デジタル赤字は円売り要因、旅行収支の黒字は円買い要因、円の需給ではサービス収支も重要

サービス収支は、輸送、旅行、その他サービスで構成され、1996年から2023年までの年間金額の推移は図表2の通りで、赤字基調にあります。デジタル赤字を計算する際によく用いられる、①著作権等使用料、②通信・コンピューター・情報サービス、③専門・経営コンサルティングサービスは、その他サービスに含まれますが、足元で、その他サービスの収支の赤字は増加傾向にあり、これは外貨買い・円売り要因となります。

 

[図表2]サービス収支とその構成項目

 

旅行収支は赤字から黒字に転じていますが、これは日本から海外への旅行より、海外から日本への旅行が増えているためで、外貨売り・円買い要因となります。このように、日本はこの28年ほどで、「輸出で稼ぎ海外に旅行する」構造から「対外金融資産で稼ぎ、デジタルサービス料を払い、海外の訪日客で賑わう」構造へと変化したと判断されます。そのため、円の需給をみる上では、貿易収支に加え、サービス収支の中身も重要と思われます。

 

(2024年4月17日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【加速する円安】「1ドル=155円」まで接近…最近の「円売り・円買い」要因とは?【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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